五月病──。ゴールデン・ウィーク(GW)前後になんとなく身体がだるくなり、やる気が低下してしまう状態を総称した呼び方で、医学的な病名ではない。最近は新入社員の配属時期が遅くなった関係で、時期がずれた「六月病」も広まっているようだ。五月病の背景と対処方法について、『「職場のメンタルヘルス」を強化する』(ダイヤモンド社刊)などの著書がある新宿ゲートウェイクリニック・吉野聡院長に話を聞いた。(医学ライター 井手ゆきえ)
五月病は正常な防衛機制
GW前後の不調は当たり前
──そもそも、五月病とはなんでしょうか?
医学的には「適応障害」とされるもので、特定のストレスに対する心身の反応です。いわゆる“五月病”には変化の積み重ねが影響しています。新入社員の場合、それまでお金を払って学ぶという「お客さま」的な立場から、今度は一労働者として会社の指揮命令系統に従ってお金を稼ぐ立場へと、ガラッと変わる。人生で最も大きな変化を経験している真っ最中なのです。
もともと、日本人は異文化への適応があまり得意ではありません。まして今の10代、20代は学校の教師なり目上の大人に「叱られる」体験がないまま社会に出てくるので、「上司に注意、叱責される」という文化に溶け込めないのです。このカルチャーショックは案外、大きいと思います。
──会社組織という異文化に適応する過程がストレスなのですね。
ええ。でも、五月病は「病」とつくから病気なのか、と考えてしまいますが、私は正常な防衛機制だと思います。
例えば、入社したばかりの頃は、「できる社員と思われるように、頑張ろう!」と無意識にテンションを上げて自分を保とうとします。