私にとって、仕事とは自分で創意工夫してやるもの。ところが、彼らは手取り足取り育ててもらえるものと期待していた。そのギャップが大きかったんですね。こうした経験を通じて、「成功したいから雇ってください」という発想そのものが間違っているのではないかと思うようになりました。

──いわゆる「雇われ癖」ですね。その弊害とはどのようなものでしょうか。

 雇用されていると、お金に対する当事者意識を持ちにくいんです。日本では「働く=雇われる」という意識がまだまだ根強いですが、そこから抜け出せなくなってしまう。雇用されること自体を否定しているわけではないのですが、将来的なことも考えて、その人にとって原体験となる初めての労働体験は、雇われるという形ではない方がいいと感じます。

 ただ、いきなり起業しろというわけではなく、学生時代に服を仕入れて自分で売って小遣い稼ぎをしたという程度でもいい。自分なりの金銭感覚を持ってから、一つの手段として雇用されることを勧めます。

──ご自身の著書でも提唱する『サクッと起業してサクッと売却する』は、これまでの「起業のススメ」的なものとどこが違うのでしょうか。

「売却をあらかじめ念頭において起業する」という点が違います。売るために起業するなんて本末転倒だとか、責任感がないなどと思う人がいるかもしれませんが、誤解を恐れずに言うと、やりたいことの前にまずはお金だと思います。私にとってのクオリティー・オブ・ライフはお金です。お金を手にすることで、何をするにせよ可能性や選択肢が広がるのです。

──少しイメージしにくいのですが、「会社を売却する」とはどういう行為なのでしょうか。

 会社を売るとは、その会社が今後生むと予測される利益を現在の価値に換算して、株を換金すること。つまり、この先、会社経営をする中で得られるであろう利益を先取りして、お金と時間の両方を「今」の時点で手にすることができる手段なんです。