アイカーン氏と面会し自分が更迭されそうだと知ったジェイコブソン前CEOが、自らの地位保全のためなんとしてでも統合を成立させようと動いた様子や、富士フイルムHDがジェイコブソン前CEOにアイカーン氏との対立に対して支援は惜しまないと伝えた言葉、ジェイコブソン前CEOが「友よ、一緒に戦おう」と応じた文言──など、結果としてアイカーン氏側に有利な証拠ばかりが残った。

 そもそも交渉開始時から、ジェイコブソン前CEOはアイカーン氏らとの摩擦を抱えていた。当然のことながら株主訴訟も視野に入れた上で、ゼロックス取締役会や株主への地固めが必要だったはずである。だが、結果的に同じ船に乗っていたはずのゼロックス前取締役会からもはしごを外されるに至った。

 今後はどうなるのか。アイカーン氏は「ファンドなどを通じ富士フイルムHD以外の買い手を探す」とするが、そもそも複写機業界は寡占化が進んだ縮小市場だ。リコーやキヤノン、米ヒューレット・パッカードなどが、巨額を投じてゼロックス取得に名乗りを上げるかどうかは極めて不透明だ。

 さらに、富士フイルムHD側にも危機が迫る。そもそもアイカーン氏は、昨年発覚した富士ゼロックス子会社での会計不祥事を理由に、合弁契約の解消を訴えていた。現在HDの連結利益の40%を稼ぐ富士ゼロックスがもし合弁解消という事態にでもなれば、HD経営への打撃は甚大だ。“夢の買収”が悪夢に転じかねない事態である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)