フェイスブックが、写真共有サービスのインスタグラムを買収。

 このニュースは、IPOを控えてクワイエットピリオド(自粛期間)にあるフェイスブックが、それでもどうしても手に入れなければならないほど重要な買収だったと、大きな話題になっている。しかも、その買収額は10億ドル。フェイスブックが行ってきた数々の買収を上回る、最高額だ。

 インスタグラムが創設されたのは、2010年3月。たった2年前に生まれた会社に、10億ドルの企業価値がつくとは……。いったいインスタグラムには、どんな魅力があるのか?

 かいつまんで言うと、インスタグラムが可能にしているのは写真に情緒を加えることである。今や写真共有サービスは掃いて捨てるほどある。ソーシャルネットワークで写真を共有するのは当たり前。それ以外にも、写真共有だけで盛り上がっているサイトもたくさんある。そこにもう、どうでもいいと思えるほど無数の写真があって、ややうんざりしていた人々も多いはずだ。

 そこへインスタグラムは、写真にちょっとした味をつける技を持って登場したのだ。撮った写真にセピア風のフィルターをかけると、写っている風景が一変する。まるで1950年代のような懐かしい空気が、そこから立ち上がってくる。あるいは、カラーの色調を強調してみる。すると、1960年代、あの素晴らしいシックスティーズのような希望がよみがえってくるかのようだ。

 それ以外にも、明度を上げて薄暗かった風景に光を差し入れたり、あるいはつまらない人物写真に霧をかけるようなムードを演出したりもできる。写真をフレームに分割して、構成の面白さをいろいろ試すこともできる。

 インスタグラムは、ごく普通の写真にこうしたフィルターをかけたり、処理したりすることを簡単にして、作り手にちょっとした工夫をすることの面白さを与え、また見る側にも作り手の意図や心情を感じさせるのだ。そうして、互いの間に情緒的な結びつきを生むことに成功。しかも、そのすべてがスマートフォンでできるのである。その手で、もう写真にはうんざり、という気分になりかけていた人々にも、やってみようかという気にさせたのである。

 実際、そんな気分になった人々がこのサービスに続々と集まり、現在の登録ユーザー数は3000万人。フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグも「これだけたくさんのユーザー数を抱える会社を買収したことはない」と語っている。