ネット上の写真や動画などを、ユーザー同士で共有していく「Pinterest」(ピンタレスト)が人気だ。
その使い方は実にシンプル。ユーザーは、自分のページに「Board」(ボード)を設置。そこに、写真を「Pin」(ピン)――すなわち、貼りつけていくのだ。壁のコルクボードに写真を貼り付けて、飾っていくようなイメージだ。
ただし、ネット上のコルクボードでは、ソーシャルな愉しみ方ができる。自分の写真を公開するだけではなく、他のユーザーをフォロー、あるいは気になった写真を評価したり、自分のボードに貼り付けたりすることも可能となっている。
この「Pinterest」が今、アメリカではとりわけ女性を中心に爆発的に流行している。さらには、中毒性の高いソーシャルメディアとして注目を集めているのである。
それだけに、「Pinterest」の力をどのように活用していくか、現在多くの企業が模索している。「Pinterest」は、単に写真を共有するというだけでなく、バイラル効果によって商品を広く拡散させる。そのため「ソーシャル・ショッピング・カタログ」としての威力を持つからだ。
ただし、企業が活用するにあたっては注意する点がある。それは「Pinterest」が、あくまで「キュレーション」サイトであることだ。利用規約に“Avoid Self Promotion”とあるように、広告宣伝のみを目的とした使用は推奨されていない。また実際に、そうした宣伝めいた「ボード」や「ピン」は、ユーザーからも敬遠される傾向にある。
逆に、ユーザーからの支持を受けやすいのは、専門的な知識を活かした提案型のページだ。たとえば、ある旅行会社では観光地の写真ばかりではなく、旅行に必要なグッズや書籍、あるいはスマートフォンアプリなどを「ボード」によってカテゴライズしている。また、ファッションブランドの「GAP」で人気があるのは、GAPを着こなしているユーザーのスナップ写真を集めた「ボード」だ。
そうした中で、日本企業による活用事例も登場してきている。
たとえば、デザインマンションディベロッパーのモリモトがこのほどオープンした「SUMAU」という情報サイトがある。「空間」「インテリア」「食や趣味」といった、住まいと暮らしに関わる情報を、「デザイン」という切り口で紹介しているサイトである。
その「SUMAU」で、読者とのコミュニケーションツールの1つとして導入しているのが「Pinterest」だ。「SUMAU」の「Pinterest」ページで「ピン」されているのは、「家具」「照明」「雑貨」、あるいは「キッチン」や「リビング」などの住空間の写真である。いずれもデザインセンスの高いものを、編集チームでセレクトしているという(一部、同社の手掛けた物件写真もある)。
「『Pinterest』は、私どもの視点、及びユーザーからの視点を、よりわかりやすく、より楽しく整理できて、その内容を情報として共有できる。これはデザインを“学ぶ”“楽しむ”“具現化する”ための、実に有効なスキームであると考えています」(株式会社モリモト経営統括部 広報グループ 渡邊恭氏)
こうして見ていくと、「Pinterest」は企業の「提案力」がより視覚的、直感的に問われるメディアと考えることができる。自社製品のPRだけに終始することなく、いかにユーザーの“interest”を喚起することができるかが、「Pinterest」活用の鍵と言えそうだ。
(中島 駆/5時から作家塾(R))