老後への危機感こそ最大の商材
金融業界に煽られる不安の正体
内外を問わず、「老後不安」こそ、金融・運用業界にとって最大の「商材」だ。「老後にはカネが必要だ。カネのない老後は心配だ!」と顧客に印象づけることによって、金融・運用業界は、判断力の乏しい顧客のお金を実質的な手数料の高い商品に惹きつけて来た。
不安を煽って、その解決策であるかのように商品・サービスを売りつけることは、マーケティングの常套手段の1つだ。金融・運用業界だけが特別に悪いわけではない。
しかし、資金運用は動かすお金の金額が大きい。それだけ多くの手数料(顧客にとってはマイナスのリターン)を、顧客は金融・運用業界に貢いでいる。不安の正体を見極めておく必要があるし、どうすれば安心なのかを整理しておきたいところだ。
特に老後に関わる「不安」の中身は、第一に、年金の不透明感だろう。公的年金の積立金は、「100年安心」という、今にして思うと、大雑把すぎて心配な言葉が流布した2004年時点の試算から見て、急速に減少している。
デフレ下では、マクロ経済スライドが機能しなかったので、年金の仕組みではなく、デフレが続いたマクロ経済政策に問題があったなど、制度設計側にも言い分があるだろうが、公的年金の制度運営が上手く行っていないという印象は年々強化されている。
また、先般のAIJ事件によって、企業年金も多くのケースで財政が悪化していることがわかった。また、JALなどのケースを見ても、いったん裁定されて金額が確定したはずのOBの年金までが、その後の事情で減額される事例が出て来た。
また、厚労省は、年金減額のための条件を緩和する方向で(3分の2以上の同意の必要条件を、過半数にするなど)検討を重ねているようだ。企業年金による上乗せが大きな制度を持つ大企業に勤めていても、将来の年金が盤石とは言い難い。