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グローバル競争を勝ち抜く組織人材戦略

ノウハウはあっても伝える相手がいない
日本産業の課題をどうやって克服するか

大西 俊介
【第5回】 2018年6月1日
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インドの国民性を理解し
「互恵的パートナーシップ」の確立へ

 商品開発→試作と製造設計→量産という全体プロセスをグローバルのワークフォースで成り立たせるということは、個々のプロセスを異なる国籍の企業が担当することになるということです。中期的にみて、日本企業のパートナーとして大きな可能性があるのはインド企業ではないかと考えています。

 インドには労働力のポテンシャリティだけでなく、日本の製造業から組み込みソフトを長年依頼されてきた実績があります。そして、もう1つのおおきなポイントは先に述べた「匠の技」の技術継承を実現できる可能性があるからです。ここには技術継承のDigitalizationというプロセスが必要となります。つまりAIのユースケースとしてモノづくりのノウハウを蓄積していくだけの技術的バックボーンがインド企業にはあるということです。またインドの場合、相対的な国の成熟度が日本と比して若いために、「日本から学ぶ」という図式が成立します。欧州やアメリカが相手ではこれは成り立ちません。

 潜在能力からすれば、インドほど日本のカタストロフィックな労働力減少を救済するパートナーとしてふさわしい国はないと感じます。

 ですが、乗り越えるべき壁はあります。物事の考え方やコミュニケーションのスタイルが大きく日本とインドでは異なることです。インドは主張するカルチャーです。「どこが強みですか」と聞くと「なんでもできます」、と返されます。主張しなければ埋没してしまう国で育ってきた人たちからすれば当たり前の話でしょう。これに対して日本は「慎む」カルチャーです。「出る杭は打たれる」という諺はインド人たちの行動様式からすれば理解不能です。

 また問題が起きた時、状況についてインド人たちは丁寧に説明しようとします。日本人にとってはこれが「言い訳」に聞こえる場合があります。一方、欧米的な考え方を背景に持つインド人たちが、何よりわからないのが、日本人の言う「投資」という言葉かもしれません。いわゆる「勉強代」というアレですね。

 プロセスが成熟するまでは、このような考え方の違いが、全体としての未完成さゆえに生じる問題を大きくし、関係を悪化させます。これは日印の経済協力の現場における繰り返されてきたことなのかもしれません。第三者も含めたコーディネート力、並行するタスクの依存関係を考慮したプロジェクトマネジメント、リスクマネジメントについても成熟度を上げる必要があります。

 こうした課題を克服できるかどうかは、最終ゴールを見据えていられるかどうかにかかっています。ノウハウを持ちつつも実行力を失っていく国と、爆発的な実行力を持ちつつも、完成度の高い成熟したプロセスを有さない国が補完的関係を築くことにより相互メリットは計り知れないはずです。またインド企業にとって日本の経済市場は大きな魅力でもあるのです。

 当たり前のことですが互いにパートナーであることを認め合い、(さらに重要なのは)互いから学ぼうとする姿勢を保持する仕組み(時には第三者機関がこの機能を代替してもよいわけであるので)を機能させることです。

 インドとの互恵的なパートナーシップが本当に構築できたとき、日本も(日本企業も)大きなステップを超えたといえるはずです。

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大西 俊介
[インフォシスリミテッド 日本代表]

おおにし・しゅんすけ/1986年、一橋大学経済学部卒業後、同年日本電信電話株式会社に入社、株式会社NTTデータ、外資系コンサルティング会社等を経て、2013年6月より、株式会社NTTデータ グローバルソリューションズの代表取締役に就任。通信・ITサービス、製造業界を中心に、海外ビジネス再編、クロスボーダーな経営統合、経営レベルのグローバルプログラムの解決等、グローバル企業や日本企業の経営戦略や多文化・多言語の環境下での経営課題解決について、数多くのコンサルティング・プロジェクトを手掛ける。NTTデータグループの日本におけるSAP事業のコアカンパニーの代表として、事業拡大に貢献した。SAP2017年1月1日、インフォシスリミテッド日本代表に就任。著書に「グローバル競争を勝ち抜くプラットフォーム戦略」(幻冬舎)等がある。

グローバル競争を勝ち抜く組織人材戦略

グローバル化とその揺り戻しともいえる保護主義が錯綜する世界のビジネス環境。そこで生き残る企業の条件を、外資系IT企業日本代表の立場で論考する。

「グローバル競争を勝ち抜く組織人材戦略」

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