前回、2016年におきた米国や欧州での歴史的転換は、表面的にはグローバリゼーションの崩壊には見えつつも、中期的にはフランスにみられるような揺り戻しの動きを経てより高いレベルの多様性を有する世界に向かうとの意見を述べました。企業の組織や人材戦略においては、このような中期的視点を踏まえつつ、同様に、より深い多様性を需要可能とする高度なマネジメントを志向すべきとしました。
今回と次回の2回で、新たなグローバリゼーションが進行する世界において、高度なマネジメントを実現するにあたりドライバーとなるテクノロジーの進化と、そこで求められる人材の要件について話をしようと思います。
IT活用における
社会科学優位の時代
この10年くらいにおいて、その効用においてITは大きな進化をとげました。それにより、企業において求められる人材もこれまでとは異なる要件が重要視されるようになっています。
歴史的に振り返ってみると、1980年代後半くらいから、ITはビジネスの競争優位獲得のために戦略的に活用されるべき、という考え方が広まりました。
戦略(何をゴールとして達成するために)に基づきビジネス(どのようなやりかた=業務プロセス)にIT(手段)を活用する、ということですから、まずは戦略が起点、これはいまでも変わらないと思います。実現手段については業務がまずあって、これにITをどのように当てはめるかというつながりなのです。
この優先順位は、人材のプロファイルにおいても同じような階層構造を作り出しました。業務の専門家、それから、業務においてITの適用領域を考えるITコンサルタント、そして最後にシステムを構築するエンジニアというピラミッドができあがったのです。待遇面もこの階層構造に従い多寡が設定されることとなったため、IT企業の中でも優秀層は業務の専門化を目指し、結果的にコンサルティング会社への転職という流れが生まれ、また日々の人間関係においても暗黙に存在する上下関係のようなことにもなりました。
90年代後半のERPの登場は、ビジネスとITの融合の度合いをより進めるものとして期待されましたが、多くの失敗事例が、さらに戦略起点、業務起点の重要性を強めることになりました。複雑なプロジェクトを推進するシステム部門のプロジェクトマネージャーよりも、その多くは教科書的であるにも関わらず、業務知識を有するコンサルタントが、もてはやされることにもなりました、