日を追うごとに騒ぎが大きくなっている日本大学のアメフト反則タックル問題。これを機にマンモス大学の代表格である日大のブランド力や人気は低下するのか? シリーズ発売20年目を迎えた『大学図鑑!2019』の監修者オバタカズユキさんに急遽、独断と偏見による緊急記事を寄せてもらいました。

この問題で日大は「終わった」のか?

 日本大学のアメフト反則タックル問題で、世間がおおいに騒いでいる。

 アメリカンフットボールという競技について、私は門外漢なので、あのタックルがどうこうと、スポーツの観点から何も言えない。ただ、反則行為で相手選手が怪我をしたのは事実だし、その行為を監督なりコーチなりが選手に指示していたのなら、パワハラであり、刑事事件にも発展しかねない暴力であるとは思う。1時間に及ぶ謝罪記者会見を開いた、加害者側の日大の選手が立派な反省の姿勢を貫いただけに、大学側の逃げ腰な対応がとても目につく。世間が騒ぐ気持ちはわかるというか、私も似たような苛立ちを覚えている

 しかし、だ。ネット上でもそうだし、酒場で耳にしたサラリーマンの話もそうだった。多くの人々が口にしている、「これで日大も終わったな」「来年の志願者数激減は決定だね」という話のまとめ方は、ちょっと違うんじゃないの、と思う。ひねた見方かもしれないが、以下でその思いのわけを述べる。

日大アメフト問題の真相究明は必須。だが、日大のブランドや志願者数は落ちないと予想する理由来年、創立130周年を迎える日本大学のHP。理念として掲げるのは「自主創造」。

 まず、この騒動で「日大は終わった」かどうか。それはつまり、日本大学という有名大学ブランドが大きく毀損されたということを意味しているわけだが、本当にそうか。

 私は「日大」にそもそも、さほどのブランド力はないと思う。日本一の学生数を誇るマンモス大学、キャンパスの数でも日本一、中小企業を中心に卒業生の社長の数日本一、というあたりは確かにそうなのだが、学生数が多くてだから何?である。ほぼ1学部1キャンパスとばらばらに学び舎が分散しているのは、学生にとってマイナス要因だと思う。社長数の多さは学生(卒業生)数の多さの結果であり、中小企業の二世、三世社長が日大卒にはたくさんいることから、それが誇りっていうのは微妙だよね、と感じる。

 と、ここまでは、私見にすぎないが、ほかにもこんなデータがある。

 リクルート進学総研が毎年まとめている「進学ブランド力調査」で、ちょっと面白い結果が出ているのだ。同調査では、全国の高校3年生にさまざまな質問をしているのだけれど、その中の「知っている大学」(知名度)ランキングが意外な結果を出した。素朴にその大学を知っているかどうか聞いた結果、最新の2017年の調査ではこうなったのである。

「知っている大学」ランキング(知名度・関東エリア)(知名度順)
1位・早稲田大学(95.0)
2位・慶應義塾大学(91.9)
3位・青山学院大学(90.6)
4位・東京大学(90.5)
5位・明治大学(89.8)
6位・上智大学(89.2)
7位・法政大学(88.4)
8位・日本大学(87.5)
同8位・立教大学
……。

 知名度の高い大学といったら、1位は東大で、2位は日大がくるのかな、という私の予想は見事に外れた。日大は、六大学のひとつとはいえあの控えめな立教大学と同レベルなのである。大学名のあとの括弧内の数字は知名度(%)だが、日本大学(87.5)ということは、12.5%の高校3年生はその名すらピンとこないのだ。

 ちなみに「知っている大学」ランキングの東海エリアと関西エリアの回答では、20位以内のランク外だ。どのくらい知名度が低いのかもわからない。誰でも知っていると思っていた日大は、どうやら関東ローカルでそこそこ知られた大学、程度の「有名大学」のようなのだ。

 たしかに、別大学のような特有のポジションを築いている芸術学部や、アットホームな総合大学のようでもある文理学部などを除くと、日大にはマンモス以外の特徴があまりない。どんな大学?と聞かれても、「大きい、普通の……」と連想する人がほとんどで、不祥事で毀損するほどのブランドは、実のところないのではないだろうか。