学生の会見で尻に火がついてようやく監督とコーチが会見するも、苦しい言い訳を連発して学生の告白をなきものにしようとしたという、驚くような展開を見せている日大アメフト部事件。その間違いだらけの対応は、日本の大学によく見られる「危機に弱い組織」の特徴そのままだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)

「危機管理学部」もあるのに…
お粗末な日大の対応が大炎上

お粗末な対応が大炎上した日大アメフト部の内田正人前監督
日大の過去の不祥事対応を振り返れば、内田前監督だけでなく、田中理事長以下、組織全体が「不祥事の際は、“お口チャック”で乗り切る」カルチャーを持っていたことが分かる 写真:日刊スポーツ/アフロ

 日本大学がボコボコに叩かれている。

 20歳の学生が、マスコミの前に立ち、実名・顔出しで謝罪の言葉を述べたにもかかわらず、翌日会見を開いた監督やコーチは、「反則の瞬間は見てない」「思いっきりやってもらいたかっただけ」という説得力のない言い訳に終始。その一方で、「文春砲」によって、監督がしっかりと反則プレーを促していたことを認める音声が公開されたことで、「学生に罪をなすりつけている」と、全方向から怒りの声が上がっている。

 そんな大炎上に「燃料」を投下しているのが、2016年にできた「危機管理学部」の存在だ。

 日大創立130周年記念事業の一つとして開設されたこの学部は、「多様な危機から社会を守るための方法や制度を研究し、危機管理のエキスパートを育成」(学部HPより)することを目的としており、教員にはリスクコミュニケーション、メディア論なども研究されている立派なセンセイ方が名を連ねている。

 ということもあって、「学生に講釈を垂れる前に、まずは自分の危機を管理しろ!」なんて調子で厳しいツッコミが寄せられてしまっているのだ。

 研究室での机上の理論がすべて実践に生かせるのであれば、経済学の博士はみんなカリスマ経営者になっていなくてはおかしいので、このあたりの攻撃はちょっと気の毒な気もするが、実はこの指摘は非常に鋭い、というか本質を突いている。

 今回の問題はマスコミを始め、多くの日本型組織に当てはまるもので、内田前監督や井上コーチの「嘘」を切り崩すのも結構だが、その前にまずは自分たちの組織に潜む「危機」を直視しなくてはいけないのだ。

「配慮」をお願いする学生のアップ映像と本名をエンドレスで放映して、相変わらずの無神経ぶりを発揮しているマスコミだって、つい最近、女性記者を高級官僚の接待要員として使い倒していたことが分かって炎上していた。ほかにも、NHKが女性記者の過労死を4年間伏せていたように、いまだにマスコミ業界では、多くの若者がブラックな労働環境で悲鳴を上げている。

 マスコミ業界には、内田正人前監督とコーチのように「死ぬ気でスクープ獲ってこい!」「やる気を見せろ!」と若手記者にプレッシャーをかけるおじさん連中はゴマンといるのだ。