5月31日は「第31回 世界禁煙デー」だ。紙巻きたばこの煙に含まれる有害成分は喫煙者本人だけでなく、受動喫煙者も肺がんをはじめ、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患、肺機能障害などを引き起こすことは周知の事実となった。しかし、「望まない受動喫煙」対策(健康増進法改正案)を巡るゴタゴタを見ても完全屋内禁煙への道のりは遠い。また、この数年で「加熱式たばこ(蒸したばこ)」や「電子たばこ」のシェアが急増し、新たなリスクになりつつある。(医学ライター 井手ゆきえ)
健康増進法の改正案は大きく後退
客席面積100平方メートル以下は喫煙可
今年3月9日、政府は受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を閣議決定し、国会に提出した。医療施設、学校、行政機関は建物外を含む「敷地内禁煙」に、事務所や飲食店、ホテルの共用スペースなどは「原則屋内禁煙」として罰則付きで義務付けるもの。
屋内禁煙への反発が強かった飲食店については、既存の飲食店で「客席面積100平方メートル以下」、「個人経営か資本金5000万円以下の中小企業が経営する場合、喫煙か分煙かを明確に表示することで喫煙を認める(次ページの図1)。推計では既存の飲食店の半分以上(55%)が例外店舗に該当するようだ。
このほか、客、従業員を問わず未成年(20歳未満)の喫煙室への立ち入りは禁じられるが、外出時の受動喫煙を防ぐ政策にはほど遠いうえに、未成年の従業員を受動喫煙、3次喫煙──喫煙エリアの残留物から揮発する有害物質に暴露されること──のリスクから守ることができるかは疑わしい。