なぜ嘘のような弁明を繰り返す?
日大が陥った危機管理の落とし穴
日本大学アメフト部による悪質な反則タックル事件に関して、関東学生アメリカンフットボール連盟が見事な裁断を下した。内田正人前監督と井上奨前コーチを永久追放に相当する除名処分にした上で、当事者の選手とチームはどちらも今年度シーズン終了までの公式試合への出場を停止するという形で、1年間の処罰にとどめた。
指導者に厳罰を下す一方で、学生に対しては温情を示す処分であり、これは世論にとってはとても納得できる裁断だったのではないだろうか。
それにしてもなぜ日大の指導者たちは、ここまで状況が悪化しているにもかかわらず、嘘としか思えない釈明を繰り返しているのだろうか。実は、日大の危機管理が後手後手に回っている背景には、マスコミがあまり触れていないあるメカニズムが作用している。今回はその秘密を解き明かしてみたい。
日大の公式な対応に関しては、これまで全てと言っていいくらいマスコミからの非難を受けているが、象徴的な悪手の例として、5月22日に加害者となった日大の選手が謝罪会見を行った後の日大広報部のコメントを取り上げてみたい。選手が実名と素顔をマスコミの前で見せ、真摯に謝罪をした直後のコメントである。
日大のコメントでは、選手に対しては「厳しい状況にありながら、あえて会見を行われた気持ちを察するに、心痛む思いです」と表現する形で、気の毒だという意味の感想を述べている。
その上で、「コーチから『1プレー目で(相手の)QBをつぶせ』という言葉があったということは事実です。ただ、これは本学フットボール部においてゲーム前によく使う言葉で、『最初のプレーから思い切って当たれ』という意味です」と強引に定義づけた上で、「(加害者となった)選手と監督・コーチとのコミュニケーションが不足していたことにつきましては、反省いたしております」と、コミュニケーション上の失敗について謝罪している。