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親のカードで400万円使った子ども、
ヘソクリ全額150万円をつぎ込んだ主婦……
過消費する“フツー”の人々
――ソーシャルゲームの何が問題か【中編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第29回】 2012年4月18日
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 カヨコさんは「『恋してキャバ嬢』ではお金も使ったが、時間も使った」という。

 「自分は、テレビで言ってた『ネトゲ廃人(オンラインゲームで昼夜問わず日常生活を犠牲にしてゲームに熱中する人のこと)』かもしれない、と思ったことがあります。『恋してキャバ嬢』をやっている時は、本当にそんな感じでした。たしかに、コンプガチャでお金も使いましたが、時間の使い方もハンパではなかった。つねにゲームに張り付いていないとダメなんです」

 そこまで思うなら止めればよかったのに、と思うが、「今ならそう思えるが、止めるに止める事ができなかった」とカヨコさんは話す。

 「もちろん、止めたいという気持ちはいつもありました。でも、このゲームは1日やらなかっただけで、ランキングが下がってしまう。追い抜かれることがいやで、ゲームから離れられなくなった。だから、放置しておけばいいのだけど、それができないゲームシステムになっている。他のゲームより、時間の使わせ方がとにかく酷い」。

 下がるランキング、底をつく独身時代の貯金。……なんとかしなければ。焦った末に、子どもの学費のために月々貯めている子ども名義の貯金通帳に手を伸ばしそうになった時、カヨコさんは我に返ったという。

 「亡くなったばかりの祖母のことをふっと思い出したんです。祖母には本当にかわいがってもらったので、いまの自分を見たらとても悲しむだろうな、と。

 あと、娘がまだ未就学児なのに難病を患って手術をしたことも大きかったですね。娘の体にチューブが入っているのを見て、この子のためにも私も今を大事に生きなければ、と。明日死ぬかもしれないんだからみたいな事を考えました」。

 カヨコさんはアイテムをオークションに出すこともなく、退会した。それ以降、一切ソーシャルゲームは遊んでいない。

 そして、カヨコさんは話の最後を次のように締めくくった。

 「私のようにソーシャルゲームを止めたくても止められない人、きっとたくさんいると思います。だから、その人達のためにも、記事をしっかり書いてください。もう、ゲームと名のつく物は、二度とやりません」。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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