インターネット上の活動における匿名性は、表現の自由の観点からも必ずしも悪いことではないが、当然短所もある。そのひとつが、青少年が絡んだ犯罪の発生を誘発する可能性だ。たとえば、子どもは学校で「知らない人についていってはいけません」と教わるが、この危険性は登下校中もネット上も変わらない。この危険性を子どもに教えるにはどうすればよいのだろうか。
自分の子どものインターネット使用状況について把握している保護者は、どれくらいいるのだろうか。
今年の5月に警察庁が発表した「非出会い系サイトに起因する児童被害の事犯に係る調査分析について」という調査(以下警察庁の調査)によれば、昨年1年間の福祉犯罪(児童買春、児童ポルノ、青少年保護育成条例違反など)における被害児童(851人)の約70%が保護者からの指導を受けていなかったという。その一方で、昨年4月にフィルタリング大手のネットスターがおこなった調査によれば、保護者の75%が、「子どもがネットをひとりで自由に利用することに、不安を感じている」そうで、この状況からは保護者の漠然とした不安と無力感が感じられる。
2009年に施行された「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」によって、18歳未満の青少年(以下青少年)がネットブラウザ付き携帯電話を使用する際、保護者の申し出がない限り携帯電話にはフィルタリング設定が義務化された。
フィルタリングには様々な方式があるが(右図参照)、基本的には保護者は、携帯電話キャリア(NTTドコモ、au、Softbank)が接続先を決める「ホワイトリスト方式」と、特定のカテゴリを制限する「ブラックリスト方式」のいずれかを選ぶが、特に申し出がなければ自動的にブラックリスト方式となる。
このホワイトリスト方式とブラックリスト方式の違いのひとつに、コミュニティサイトへの接続の有無がある。このコミュニティサイトとは、コミュニケーションに伴うトラブルの可能性があるサイトすべて、たとえば「フェイスブック」、「ツイッター」、「ミクシィ」、「モバゲー」、「グリー」、「アメーバブログ」といったソーシャルネットワークサービス(SNS)系サイトも含まれる。
ホワイトリスト方式ではこれらのサイトに原則接続できないが、ブラックリスト方式では条件付きで可能になることがある。この例外を可能にするのが、一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA、代表理事は堀部政男一橋大学名誉教授)による第三者機関認定である。