装いに敬意を加える、極上のアクセサリー「ホンブルグ」ステットソン(STETSON)は、南北戦争が終結した1865年に創業したアメリカの帽子会社。現在は帽子の製造、販売からライセンスビジネスへと方向転換。この帽子、わが国ではソフト帽と呼ばれ第二次世界大戦まではビジネスマンの必需品だった。税抜4万2000円(銀座トラヤ帽子店)

 男に許された唯一のアクセサリーは何か。それは腕時計である。英国人に訊くと、彼らは皆、異口同音にこう答える。紳士の装いは万事抑制の効いたものであるべきで、結婚指輪以外に身につけて許されるのが腕時計なのだ、と。

 だが、私はそこに帽子なら加えてもいいのではないかと思っている。本来、紳士のルールでは帽子無しで外出できなかったが、今は時代が違う。そこで敢えて帽子を被ることをお勧めしたい。身につけることで装いに敬意が生まれる、そんな小物は他にはないからだ。

 ここで紹介するホンブルグはドイツの地名で、ウィンザー公が英国に持ち帰ったのが名前の由来となっている。クラウンの中央部に折れ目があり、絹のリボンで縁取られたブリムが巻き上がった形が特徴だ。

 洒脱な着こなしで知られた元英国首相アンソニー・イーデンが1930年代に着用し、人気を博した。今や紳士の定番ともいえる帽子となった。ピークドラペルのスリーピース・スーツに合わせれば、被るだけで着こなしにひとクラス上の上質感が加わるだろう。帽子が苦手という人も多いが、自分の顔形に似合う形が必ずあるはずなので、これは被ってみて探すしかない。

 唯一、帽子を被る際に忘れてはならないのは、室内では必ず脱ぐというマナーである。帽子を脱ぐ所作が様になれば、帽子のお洒落も上級者だ。

銀座トラヤ帽子店 TEL:03-3535-5201