バイオ創薬が当たり前になった21世紀。今年はバイオ医薬品の特許切れ後を狙う「バイオシミラー(バイオ後発品)」開発も本格化すると予想される。先行バイオ医薬品は「高額医療」の代名詞でもあり、後発の廉価版が市場に出回れば切り替えは必至。日本の市場規模は現状250億円程度だが、今後5年で10倍にふくれ上がると予想されている。
一方、最先端での開発競争が激化しそうなのは「エピジェネティクス」をキーとする創薬。エピジェネティクスとは「塩基配列の変化以外のメカニズムで遺伝子の変異を制御し、生体に変化を起こす現象」を指す。平たくいうと遺伝子のスイッチを後天的にON/OFFする仕組みで、遺伝的に同じ一卵性双生児の外見や性質に差異が生じるのは、この現象があるから。同じ台本でも演じる俳優と演出によって台詞が書き換わるわけだ。ちなみに「エピ」は「後の」を意味する。
疾患との関連では、がんや精神疾患など慢性疾患にかかわる“エピゲノム変異”を阻害する薬の開発が続けられている。現在、臨床応用されているのは全世界で数種類のみ。日本では昨年、血液がんの一種である骨髄異形成症候群の治療薬「アザシチジン(製品名ビダーザ)」と皮膚T細胞性リンパ腫を適応とする「ボリノスタット(製品名ゾリンザ)」が承認された。それぞれ異なるメカニズムで「OFF」になったがん抑制遺伝子のスイッチを再び「ON」し、遺伝子転写を誘導する。症例数が少なく、副作用も強いため過度な期待は禁物だが、新しい治療手段へのゲートが開かれたことは間違いない。