そこでスウィフトのツアーチケットにダイナミックプライシングが導入されたわけだが、最高価格を見ると3年前は225ドルだったが、今回は1500ドルになった。また、今年1月に995ドルで販売されていた席は、4月に595ドルへ下落した。価格変動がこれほど激しいと、ファンは買い時をよく考えなければならない(参考:米誌「ローリングストーン」4月9日、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」5月15日)。

 また、米国の大手映画館チェーンのリーガルも、今年から価格が変化する方式を試験的に導入した。ニューヨークにある映画館の6月12日(火)の価格を見ると、サンドラ・ブロックらが出演する「オーシャンズ8」は、午前11時10分からは8.65ドルだが、午後7時40分からは約2倍の17.15ドルだ。

 オーストラリアのある映画館は、混雑する夜の時間帯に映画の入場券だけでなく、スナックやドリンクの価格も上昇する仕組みを試験的に導入した。しかし、それはダイナミックプライシングの名を借りた単なる値上げではないかとの批判が消費者の間で高まり、今年1月に中止となった。価格変動の根拠が不透明だと、ダイナミックプライシングは企業イメージを傷つけるケースがある。

 特に日本では、需給がタイトなときに価格を引き上げると「強欲な企業だ」といった非難が湧き起こりやすい。ダイナミックプライシングは、うまく機能すれば収益向上に貢献するものの、価格決定の仕組みに対して不信感を持たれないように注意する必要がある。

 なお、この先ダイナミックプライシングが広範囲に普及すると、政府の従来の物価統計ではインフレの実態をつかみにくくなってくる恐れがある。ビッグデータの利用がより必要になるだろう。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)