そのなかで救世主となっているのが乗用車ベースのSUV、さらにその上のライトトラック。まず販売台数が乗用車に比べて多い。フォードのピックアップトラック「Fシリーズ」は2017年、実に89万6000台も売れた。続いてGMのシボレー「シルヴァラード」が58万5000台、フィアット・クライスラーの「ラムピックアップ」が50万台。この3モデルが乗用車およびライトトラック市場の1、2、3位を占めている。

 1台あたりの売り上げおよび粗利も大きい。人気の高いダブルキャブ(4ドア)はリースで1ヵ月あたり500ドル前後。リテール販売で5~6万ドルくらいはすぐ取れる。自重が大きいため製造コストもそれなりにかかるが、リンカーンやキャデラックなどが斜陽化した今、ライトトラックはデトロイト3にとってプレミアムセグメントに準じたビジネスとなっている。

 単に高収益を目指すだけなら、「出来」のいい日本車やドイツ車などとの競合が厳しく、それらに勝ったとしても旨みが小さい乗用車を捨てて、そこに集中するというのは自然な選択でもあるのだ。

本拠地で乗用車をやめることは
“博打”のようなもの

 だが、元フォードジャパン幹部は、本拠地アメリカで乗用車をやめることは、中長期的に見れば“博打”のようなものだと言う。

「フォードは欧州や中国など世界に拠点を持っているため、乗用車はそこでやればいいということなのでしょう。が、自動車メーカーというものは、生産は世界各国に散りばめることは簡単にできても、研究開発はやはり“お膝元”の力がモノを言う。そこが乗用車をやらなくなれば、他の地域のモデルについても影響が出る可能性がある。フォードはEV、自動運転の性能が早期に上がり、自動車メーカーのビジネススタイルが大きくチェンジすると読み、高収益ビジネスに集約してその時代が来るまでの時間稼ぎができれば十分だと考えているのかもしれません。その読みが当たればいいのですが、外れたときのバックアッププランには不安があると言わざるを得ない。2030年に世界のフォードでいられるのか、アメリカのローカルメーカーになってしまうのか、結構背水の陣を敷いているように見えます」