正念場を迎えている
デトロイト3

 アメリカで乗用車からの撤退、ないしは大幅縮小という戦術を取るのは、フォードだけではない。GM、フィアット・クライスラーも同様だ。が、世界で初めて大量生産によって多くの人が買えるクルマを生み出したフォードがその決断に踏み切るというのは、やはり意味合いが特別だ。

 実はデトロイト3は90年代にも転機を迎えていたことがある。ビル・クリントン大統領が当時のGM、フォード、クライスラー首脳を引き連れて来日し、日本にバイアメリカを迫ったことは有名だが、「その裏でアメリカは自動車産業はもはや高付加価値産業ではないとして基幹産業から外し、医療、食料、エネルギー、コンピュータサイエンスなど次世代産業へのシフトを目論んでいた」(経済評論家の故・梶原一明氏)という。

 それから20年ほどの間、デトロイト3にとって良い時はほとんどなかった。今日、GMはすでにオペルを手放し、フォードも乗用車を手放そうとしている。加えてハケットCEOは収益性改善のために10%の賃金カットも表明しているが、すでにフォードの賃金はアメリカ人にとってまったく魅力のないレベルで、これ以上削減すると将来を切り開くための人材を集めるのも難しくなりかねない。

 このまま縮小していくのか、それとも改革の痛みを乗り越えて再びモビリティの世界で新たな覇権を唱えることができるのか、フォード、そしてデトロイト3は今、正念場を迎えている。