ソニーが創業直後に手掛けた商品としては、トランジスタラジオ、テープレコーダーが有名ですが、その前には電気座布団というのもあった。当時発明されたばかりだったトランジスタを、人に近いラジオという商品に使うこともやってきた。

「ソニーと言えばウォークマン」といまだに皆さん言ってくださいますが、これも音楽を聴く楽しみを人に近づけ、時間や空間の制約を無くし、音楽を“人に近づけた”。また、日本の外資規制自由化第一号として1968年に設立されたのがCBSソニーレコード(現ソニーミュージック)ですが、山口百恵などのアーティストの育成を始めることで“クリエイターに近づいた”。

 金融事業も、お客様とダイレクトに接点を持つ事業です。さらに(1979年に米プルデンシャル生命との合弁企業設立により)金融事業に参入してから、経営が黒字化するまでに20年ほどかかっています。私自身は20年経たないと成果が出ないものに投資ができるかどうかは経営者としては自信がありませんが、自分の任期では成果が出ないことを断行することは経営の重要な規範であると考えています。盛田さんの金融事業への投資はまさにそれを体現したものでした。

――注力するコンテンツIP(知的財産)分野はどんなものですか。

 CBSソニーから始まった最も歴史の長い音楽、ノンフィクション以外の映像、ゲーム、そしてアニメの4つです。

 音楽の場合はアセット(資産)が重要です。先日決定したEMIミュージックパブリシングの買収が、独占禁止法審査などをクリアし無事クローズできれば、アセットとして安定した収益を上げることが期待できます。例えば、Spotifyなどのストリーミングサービスはユニバーサル、ソニー、ワーナーの3大メジャーレコードレーベルのどれかが欠けていては成立し得ず、そのため音楽事業で強化すべきはアセットです。

 ところが、映像は違う。ハウス・オブ・カードがNetflixでしか見られないのは全く問題がない。というのも、映像は子供のアニメなど例外を除けば、基本は1回しか見ないものだからです。ですから、作る力がより重要になります。ディズニーのようにマーベル、ルーカス、ピクサーなど異なる分野のブランドを揃えているのはすごいことですが、その強さを支えているのは一つ一つの作品のクオリティの高さだと思っています。映像で強化すべきはここです。