――10年後のソニーはどんな企業になっていますか。

 人に近づく企業、です。IPとIDと社内では言っています。IPとはコンテンツIPと半導体のIPで、どちらも強いIPをソニーは持っている。IDとはユーザーIDです。強いIPを武器に直接、できるだけ多くのお客様とつながることを目指します。ソニーのDNAから外れるものをやっても意味がないので、今、柱になっているものを太くしてくれという話をしています。

ソニー・吉田憲一郎社長

 半導体は現状ではカメラ向けのイメージセンサーが主体ですが、“動くもの”もやりたい。実績としてすでに「aibo」があります。aiboは視覚に使われているイメージセンサーだけではなく、腰のセンサーもあればアクチュエイター(駆動装置)も22個搭載されている。私はCFO時代から、「ゴルフカートでもルンバでもいいから、動くものもぜひやってほしい」と言ってきた。不確定なことは名言できませんが、2020年代のモビリティの安全を高めることに貢献する企業になることを目指します。

 エレキは大事にし、これからも続けていきますが、「人に近い会社であり、間口が広いブランドを持つソニー」であることを大事にしていきたい。

 ここ10年、ソニーはやや“仕込み”が足りなかった。今後はしっかり仕込んでいかなければならない。今最も欲しいのはデータです。例えば、都内のタクシー会社6社と組んで配車アプリサービス事業を開始しますが、首都圏を走るタクシーがどういうときにブレーキを踏むのかなどのデータは、今後のモビリティ関連事業のためにも徹底的に集めておきたいと思っています。

 また、月に8000万人が利用しているプレイステーションネットワーク。ユーザーのゲームの仕方を分析することで、あるゲームをプレイしている人には次にはどんなオファーをすればいいかが分かる。そして共通の趣味を持つ人のコミュニティ、“コミュニティ・オブ・インタレスト”を築くことが目的です。

 金融もデータの宝庫です。ただ、今のフィンテックはインターフェイスにまつわるものが中心で、すでに競争が激しく、ここをやってもそこまで高い利益率は見込めない。

 データやAIの活用方法として面白いのは、働き方改革の面です。例えばソニー生命5000人のライフプランナーの営業手段としてAIを使う。以前、ある製薬会社の社長に「うちのMR(医薬情報担当者)はどこの医者を回るかをAIで決めている。生産性が格段に上がった」というお話をお伺いしたことがあります。このように、資産である人に新しい付加価値を付けるためにデータとAIを使う。