BASFという社名は、Badische Anilin und Soda Fabrikの略で、直訳すると「ドイツの南西部にあるバーデン地方でアニリンとソーダを製造する工場」という意味です。アニリンとソーダは、合成染料のべ―スになる原料です。

 私には、過去のように世界のどこかの工場で生産された化学製品を輸入して、日本の顧客に販売するという、輸入商社のようなビジネスモデルだけでは将来の成長が望めないとの危機感があります。そこで、もともと日本法人には主体性が欠けていたというわけではないのですが、これからは日本でものづくりに汗をかく日本企業や、海外で事業を展開する日系企業に寄り添うようにして、顧客がどのような製品やサービスを求めているのかを、日本法人として“主体的に”把握し、同時に世界のBASFが持っている幅広い製品や技術などをいかに生かしていくかということを考えたい。それなしには成長できないと思う。

 その際に、「BASFでは」とドイツ流のやり方を押し付けるばかりではなく、必要に応じて、日本流に個別対応で調整することも行う。顧客から見て、もう少し自由度を増した格好で、顧客の要望に沿った製品やサービスに“変換する”ことで、価値を発揮したい。日本には、スペシャリティと呼ばれる特殊な化学製品の領域で強みを持つメーカーがたくさんあります。今後は、これまで以上に製品の多様化が進む。そうした大きな変化の中で、私たちは顧客のサポートに取り組みながら、一緒に新しい事業を模索するという方向性も考えていく。

リチウムイオン電池の試作工程で正極活物質の性能を確認しているところ過去数年、BASFジャパンは日本市場を意識した投資を活発化してきた。2001年より稼働する尼崎研究開発センターには、13年にバッテリー材料研究所が新設された。写真は、リチウムイオン電池の試作工程で正極活物質の性能を確認しているところ 写真提供:尼崎研究開発センター バッテリー材料研究所

――過去数年、BASFの日本法人は、尼崎研究開発センターの中に自動車向けのバッテリー材料研究所を開設したり、リチウムイオン電池の正極材では戸田工業と合同会社を立ち上げたりするなど独自の投資活動を活発化しています。日本法人が成長するためには、ドイツの本社と戦うこともあるということですか。

 いやいや、戦うのではありません(苦笑)。

 BASFグループの一員として調和を取りながら、日本法人としてこれまで以上にグループの中における影響力を増すということです。BASFは、130年前からアジア市場に着目してきましたが、近年はより重要性が増しているからです。