では、この保険料はどのように使われているのでしょうか。そして、どんな論点があり、どういう改革が進められているのでしょうか。1951年製作の映画『めし』と、2016年製作の『わたしは、ダニエル・ブレイク』を通して見ていきましょう。

働き先が見付からず
「ヤケ」になる女性

『めし』の監督は、小津安二郎と並ぶ巨匠の成瀬巳喜男。主演は、日本映画史に残る名女優の原節子で、岡本初之輔(上原謙)の妻、三千代を演じています。

 映画の舞台は、終戦直後の大阪。三千代は5年前、周囲の反対を押し切って初之輔と東京で結婚し、初之輔の仕事の関係で大阪に引っ越してきましたが、大阪に引っ越して3年を迎えた2人は倦怠期に入ります。

 中でも、初之輔が帰宅してもほとんど話さないため、三千代は「あなたは私の顔を見ると、おなかがすいたということしかおっしゃらないのね」などと不満を漏らします。そして、 何かと言えば煮え切らない初之輔に愛想を尽かし、実家の横浜市に帰ってしまいます。

 しかし、実家に戻っても食いぶちがないので、三千代は職探しに出掛けます。その時、三千代が出向くのが「川崎公共職業安定所」です。いわゆる職安、現在のハローワークです。

「めし」ジャケット
「めし」DVD発売中 ¥4500+税 発売・販売元:東宝

 ここで少しだけハローワークの歴史をひもとくと、1921年に職業紹介法が制定されたことで、自治体の無料公共職業紹介事業が始まり、1938年の法改正で国営に移管された後、1947年に職業安定法に名称が変わりました。その意味では、三千代が訪ねた頃の公共職業紹介所は戦後に再スタートを切った直後だったことになります。

 ところが、職安は黒山の人だかり。三千代が入るのに逡巡 し、遠巻きに眺めていると、たまたま知り合いの山北けい子(中北千枝子)に声を掛けられます。けい子は男の子とともに夫の復員を待っており、生活に苦労していました。その後、2人で交わされる会話です。

けい子 「あと2ヵ月で失業保険が切れるのよ。その間、何とかしなくちゃならないと思うと、このころ夜もおちおち眠れないわ」
三千代 「ご主人はやっぱり…」
けい子 (中略)「でも、いくら頑張っても女一人ってどうしてもダメね。いつになったらホッとできるのか、まるで目の前真っ暗よ。時々、どうにでもなれってヤケ起こしたくなるわ」