ポンペオ長官は13日、「合意文書には入っている。『完全』という言葉は、検証と不可逆という意味を包含している」と強弁したが、これはいかにも苦しい。ただ、トランプ大統領が会見で、検証は米国と国際機関の「コンビネーション」で行うと示唆しているだけに、議論はなされていると見た方がいいだろう。

米側が切った大きなカードは
米韓合同軍事演習の中止

 トランプ大統領の「米韓合同軍事演習の中止」発言を聞いたとき、筆者は、政権に近い関係者に最近聞いた、米朝の事前交渉の実態についての話を思い出した。

 関係者が言っていたのは、「米国は、北朝鮮に対し『まず行動で示せ』と伝えている。北朝鮮が行動したときに、米国が次に何をするかは約束していない。米国は、自分の行動は自分たちで決める」という話だった。

 北朝鮮はすでに、「3人の拘束米国人の解放」や「核・ミサイル実験の停止」「核実験場の廃棄」を首脳会談前に行っていた。筆者は、米国がその見返りにどんな行動を取るのか注目していただけに、「米韓合同軍事演習の中止」という大きなカードを記者会見の場で切ったことに、「なるほどこれが米国からの行動なのか」と腑に落ちた思いだった。

 トランプ大統領は、何の保証もなく「米韓合同軍事演習の中止」に踏み込んだのではない。北朝鮮が積み重ねてきたこれまでの行動への「見返り」として、大きなカードを切ったのだ。

 その意味では、次に大きな行動を求められるのは、北朝鮮側だ。段階的な非核化に向けたプロセスは、実質的にスタートしている可能性がある。

 もちろん、北朝鮮が過去繰り返してきたように、行動を取らない可能性は多いにある。ただ、過去と今回が違うのは、首脳同士が会って約束したという点だ。トランプ大統領は毀誉褒貶が激しく、怒り出すと手がつけられない気性の持ち主だ。金委員長は、その「恐ろしさ」にも今回十分触れたのではないか。