トランプ大統領は
“困難な現実”に屈した

 結局はトランプ大統領が段階的対応を呑み、「検証」「不可逆化」を言わない形で首脳会談に臨むことになったから、北朝鮮の揺さぶり戦術による巧妙な外交の成功と言えよう。

 だが、具体的に考えれば完全な検証や不可逆化はそもそも不可能に近い。

 仮にやれても10年以上はかかることを専門家たちから聞いて、トランプ大統領は態度を一転したようだ。北朝鮮の外交に翻弄されたというより、現実に屈したと思える。

 今回の共同声明は非核化について、文在寅韓国大統領と金国務委員長が南北首脳会談で合意した「板門店宣言」を北朝鮮が再確認するとしている。板門店宣言は「南と北は完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現する共同の目標を確認した」、「北側の主導的措置が朝鮮半島の非核化に重大」などと述べている。

 この宣言発表当時も「非核化をどう実現するか具体性がない」との批判が出た。文大統領は「それは南北で決められることではなく、米朝交渉による」と答えた。

 だが今回の米朝共同声明は「板門店宣言を再確認する」だけだから堂々巡りとなり、具体的には何も決まっていない。

 まるで2企業が共同で高層ビルを建設する計画に合意したが、用地も設計図も決まっていないのに完成予想図だけを発表したような形だ。

 非核化をどのような方法で進めるかは、今後の実務者間の協議に委ねられるが、トランプ大統領が次の大統領選挙前に結果を出すようせかし、「プロセスに着手すれば、使用不能になり実質的には終わったようなものだ」と言っている以上、徹底的な検証になりそうにない。すでに北朝鮮は4月20日に労働党中央委員会で「今後核実験と中・長距離ミサイルの試射は行わない」と決定し、昨年11月29日以後、約7ヵ月間、弾道ミサイルを発射していない。

 5月24日には豊渓里の核実験場を爆破、6月12日にはミサイルのエンジン試験工場を閉鎖した、と発表している。これらの動きをトランプ大統領が「着手に当たる」と認め、成果のようにすることもあり得る。