これから始まる教員採用試験の受験者必読。
本連載では、元NHKアナウンサーの超人気講師で、毎年多数の小論文試験合格者を輩出する「ウェブ小論文塾」代表・今道琢也氏の新刊『落とされない小論文』から、内容の一部を特別掲載する。本番直前からでも、独力で合格水準まで到達するスキルと考え方をお伝えしていく。
言葉の意味をあいまいに理解していると、こうなる
教員採用試験では、ほぼ確実に小論文がありますが、苦手としている人がとても多いようです。
中でも、もっともありがちな失敗は、「問題文のキーワードとなる言葉の意味を理解できていない」というミスです。
たとえば、次の問題例を見てください。
【問題例1(1)】
子どもたちに主体的に学ぶ姿勢を身につけさせるために、どのように取り組んでいくか?
【問題例(2)】
子どもたちに規範意識を身につけさせるために、どのように指導していくべきか?
このような出題で、キーワードになっている「主体的」「規範意識」といった言葉の意味を正確に理解できていない人が多い、ということです。
あなたは、それぞれの言葉の意味を正確に説明できますか?
こうした抽象的な言葉は、何となくわかっているようでいて、いざ説明しようとすると案外難しいものです。
とくに小論文試験においては、辞書的な意味だけでなく、教育現場でどういう使い方をするのか、具体的な例を示すことも求められます。私が答案を指導していると、こういうキーワードを理解しきれないままに書いている人が、実際にとても多いのです。
1つの例を挙げれば、「主体的に学ぶ」というテーマの出題に対して、「子どもたちの理解力を見極めながら適切な進度で授業を進める」という方向になっている答案などです。
主体的とは「自分の意志や判断によって行動する」という意味ですから、この問題の趣旨は「どうすれば子どもたちの『自分から学ぼう』という姿勢を育てられるか、そのための取り組みを述べよ」ということになります。したがって、「子どもたちの理解力を見極めながら適切な進度で授業を進める」ということとは、全く別の話になります。
言葉の意味をあいまいに理解したまま書くために失敗しているわけですが、こういう答案が非常に多いのです。
必ず押さえておきたい
10の頻出キーワード
下記に、頻出するキーワードを10個挙げて、その意味と具体例をまとめます。
是非とも、試験前に確認しておいてください。
・主体性を育てる
……他人が決めたことに従う、他人から言われたからやる、ということではなく自分の考えや判断に沿って行動していく力を育てていくこと。自分から関心をもって勉強したり、自分で目標を立ててスポーツなどに取り組んだりできる子どもを育てていく、といった意味合い。
・規範意識を育てる
……規範とは、従うべきルール。例えば学校や社会のルール、あるいはクラスで決めたことなどを守って行動できる子どもを育てること。
・自立心を育てる
……自立とはすなわち、独り立ちするということ。他の人に頼るのではなく子どもたちが自分で判断して行動できる力を育てていくということ。
・人間性を育む
……人間性とは「人間らしさ」指す。例えば、思いやりの気持ち、感謝の気持ち、などを育んでいくということ。
・教員としての資質
……教員として仕事をする上で求められる性質、と言い換えられる。例えば、粘り強さ、他の教員と協力し合うことが出来る、など。
・自尊心を持つ
……自分を大切だと思う気持、自信を持つ気持ち。例えば自分の意見をしっかり言える、嫌なことをされたら、はっきりと嫌だと言える、ということ。
・社会性を育てる
……社会の中で他の人たちと関わりながら生きていく力を育てること。例えば、人に会ったら挨拶をする、他の人と仲良くできる、自分の考えをきちんと相手に伝えられる、ということ。
・道徳心を育む
……やって良い事、悪いことの区別ができること。また、お年寄りに席を譲る、といった礼儀や思いやり、マナーが身についていることも含まれる。
・創造性を伸ばす
……他人の物まねではなく、新しいものを作り出す力を指す。例えば絵画、音楽、工作等の分野でそうした作品を作り出す力を伸ばすこと。あるいは五教科の勉強であっても、国語の授業で詩や短歌などの創作をしたり、数学の授業で自分なりの解法を考えたり、といった話に応用できる。
・自己肯定感を育む
……自分は自分で良い、自分は存在している価値があるという、自分を肯定する気持ちを育てること。例えば、他人の顔色を窺って遠慮ばかりする、ということではなく、自分に自信を持ち、意見をきちんと言える子供を育てていくこと。
『落とされない小論文』では、このほか、小論文試験に一発合格する必要最低限の情報を凝縮して伝えています。ぜひ、直前対策に使い倒してください。