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 この世には「ギフテッド」と呼ばれる神から与えられたとしか思えない才能を持つ凄い人間たちがいる。そのうちの一人がアメリカ、アーカンソー州のテイラー・ウィルソン少年だ。彼は9歳で高度なロケットを”理解した上で“作り上げ、14歳にして5億度のプラズマコア中で原子をたがいに衝突させる反応炉をつくって、当時の史上最年少で核融合の達成を成し遂げてみせた。

太陽を創った少年『太陽を創った少年』
トム・クラインズ著、熊谷玲美訳、早川書房、496ページ、2700円(税別)

 彼は核融合炉を作り上げるだけで止まらずに、そこで得た知見と技術を元に兵器を探知するための中性子を利用した(兵器用核分裂物資がコンテナなどの中に入っていると、中性子がその物質の核分裂反応を誘発しガンマ線が出るので、検出できる)、兵器探知装置をつくるなど、その技術を次々と世の中にために活かし始めている。本書『太陽を創った少年』は、そんな少年のこれまでの歩みについて書かれた一冊であり、同時にそうした「少年の両親が、いかにしてのびのびと成長し、核融合炉をつくれる環境を構築してきたのか」という「ギフテッドの教育環境」についての本でもある。

 著者は[ポピュラー・サイエンス]誌などで科学ライターとして活躍するトム・クラインズ。彼はその確かな知識でもって、核融合炉をどのように作るのか、核融合がどのようなプロセスで起こるのか、またそこでどのような困難が発生するのかをしっかりと描写していってくれる。そのおかげで本書は、きちんとしたサイエンス・ノンフィクションでもあるのだ。少年が幼少期から科学と工学に取り憑かれこれでもかと新しい領域を開拓し続けていく様は驚異という他なく、その脇を固める両親たちのほぼ完璧なサポートもあって、安心して世紀の道筋、科学が成されていく興奮を味わうことができる。今年読んだ中でもベストといっていい出来だ。