想定を上回る利用客増に沸く「つくばエクスプレス」と「日暮里・舎人ライナー」。しかし、悪化する混雑率緩和のための増発が設備投資額の膨張を招いており、決して手放しで喜べる状況にはなっていない。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
利用客が想定を上回り続ける
業績好調のつくばエクスプレス
秋葉原とつくば学園都市を結ぶ「つくばエクスプレス」を運営する首都圏新都市鉄道は、6月8日の2017年度決算発表で9年連続の経常黒字達成とともに、最大で240億円に達した累積損失を解消し、初めて利益剰余金を計上したと発表した。
当初計画で2025年度を見込んでいた単年度黒字化を大幅前倒しして2009年度に達成し、ここ10年で3400億円以上もの返済も進めた。沿線自治体や建設を担った鉄道・運輸機構に対する債務が7000億円近く残っており、決して楽観できる状況ではないものの、近年新たに開業した鉄道路線としては珍しく、予想以上に好調に推移していると言えるだろう。
つくばエクスプレスは2005年8月に、6両編成30本(計180両)の車両で、朝ラッシュ時間帯のピーク時は1時間16本運行の体制で開業した。しかし、すぐに利用者が増加しはじめたため、2008年に4編成24両の車両を増備し、ピーク時は1時間20本に増発した。2012年にはさらに3編成18両の車両を増備し、ピーク時に1時間22本まで運行本数を増やすとともに、駅の混雑を緩和するために南流山駅や秋葉原駅の改良工事を実施している。
列車の運行本数を増やすのは簡単なことではない。1編成あたり10億円以上する車両の増備、運転士の増員はもちろんのこと、消費電力増に対応するための変電所の改修や、車両基地の拡張も必要となるなど、様々な費用がかかるのである。
開業時に109%だった朝ラッシュ時の平均混雑率は2008年、国土交通省が整備目標に定める150%を突破してしまう。2012年の増発により一時150%を下回るも、再び増加基調に転じ、2016年度は前年比でプラス8ポイントの162%まで悪化している。2017年度の平均混雑率はまだ発表されていないが、定期券利用者数が前年比5%以上の増加を示していることから、混雑はさらに悪化していると見られる。
そこでつくばエクスプレスでは、今年度から2020年度までの3ヵ年で100億円以上を投資し、車両5編成30両を増備、2020年春に朝ラッシュ時の運行本数を22本から25本に増発する、さらなる輸送力増強計画を発表した。これによって輸送力は現在よりも15%増強される見通しだ。