「会社の残業代が出なくなったよ」
「えっ、何かあったのか?」
「実は労基署の指導が入り、業務見直しで残業が減ったんだ」
「大変だなあ」
「お金が足りなくてこれじゃ毎週C子ちゃんに会えない。C子ちゃんと話せることが俺のたった一つの生きがいなのに……。どうしよう?」

 ほぼ毎週イベントに参加しているAとDは、C子と顔なじみになり、挨拶やごく軽い雑談程度は交わせる関係になっていた。しかし、そのポジションを獲得するために月に10万円以上をつぎ込んでいたのである。

 Dは落ち込むAを見て、提案をした。

「それじゃ、会社が終わってからバイトすればいいじゃん」
「えっ、バイト!?」
「そうだよ、実は俺、夜に居酒屋でバイトしてるんだ。一緒にやらないか?」

居酒屋でバイトを始めたら
思わぬ人と遭遇

 Dの誘いに乗ったAは、1週間後から居酒屋でバイトを始めた。仕事の内容は厨房内の補助作業。勤務は週3回、勤務時間は午後6時から10時までの4時間、時給は1200円である。

「ここなら月に6万円くらいは稼げるな。これで来月のC子ちゃんのバースデーパーティーに参加できるぞ。やったぜ!」

 ある日、居酒屋に出勤すると、Aは店長から声をかけられた。

「今日はお客さんの入りが悪いから、外で呼び込みしてきてくれないか?」
「えっ?呼び込みですか?」

 Aがしり込みをしていると、店長は笑いながら言った。

「大丈夫。深く考えずノリでやればいいんだよ。アハハハ……」

 店長の言葉に気を取り直したAは、店の外へ出た。そして大声で叫んだ。

「いらっしゃいませ!今日は特別サービス!2時間1200円で飲み放題!!」

 何回か叫んでいたその時、背後から聞きなれた声がした。嫌な予感がする。振り向くと、B課長だった。

「おい……、Aじゃないか。こんなところで何やってるんだ!?」