仕事上のミス等を口実に罰金を科す、あるいは給料から減額するという話は意外にも少なくない。本ケースのように、法律的にも違反している減給制度は、社員同士で足を引っ張り合い、組織の崩壊を招く!(写真はイメージです)

先代社長は20代後半で起業、創業時のメンバーだった専務とともに、会社を築き上げてきたが、創業30年を節目に、社長を息子に託した。ところが新社長は、社員たちのミスが多いことに気づく。部下は1回のミスにつき5000円、上司が部下のミスの報告を怠ったら、5万円を各々の給料から減額することになり、社長は社員を監視し始めた。すると、社内の空気は悪化する。この現状に危機感を抱いた専務はどう打開していったのか?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
 先代社長が20代後半で起業、主にビジネスパーソンを対象に、教育関係の出版物販売、研修やセミナーの企画・運営を全国展開している。従業員数は約50名。先代社長はかなりのアイデアマンで、時代に合ったユニークな企画を次々と立ち上げ、成功させてきた。その努力のかいもあって、会社の売り上げは上昇を続けていたが…。
<登場人物>
A:現社長。30歳。1年前、父親である先代社長から業務を引き継いだ。
B:専務。55歳。会社創業時から勤務。先代社長や部下からの信望が厚い。
C:入社5年目の中堅社員。27歳。
D:Bの大学時代の同級生で社労士。

息子に社長を譲り、
先代社長は旅に出る

「これから世界一周放浪の旅に出ます。会社創業30年という節目を迎え、Aに社長の座を譲ることにしました。みんな、あとはよろしく頼むよ」

 半年前のある日、先代社長はこう言い残し、世界一周へと旅立ってしまった。

 後を引き継いだA社長は、大学を卒業してから他社へ就職後、1年半前に甲社に転職、先代社長やB専務の指導を仰ぎながら仕事を覚えていった。A社長はまじめな性格で物事に細かいところがあり、豪快でイケイケドンドンな雰囲気の先代社長とは対照的である。社員たちは先代社長を慕っている者が多く、社内の雰囲気は明るかった。