こうした動機を実現させる手法は、「ビジネスマンのディール」であり、アメリカの「力の誇示」だ。相手に制裁措置をちらつかせ、要求をふっかける。もしアメリカの要求をのまなければ、それを躊躇なく実行する。相手が妥協してくれば、それで合意を作る。

 そこに、目指すべき世界に関して中長期の戦略的構想があるわけではない。あるのは、ゲーム理論の「脅し戦略」のように当面の自己利益を最大化しようとする、庶民にもわかりやすいディールだ。その自己利益最大化は時として露骨な「自己都合主義」となって現れる。

 つまりトランプ政権の特徴は、外交では「米国第一主義」、内政では選挙勝利至上主義となって現れるのである。

 こうしたトランプ大統領の外交手法は、知的エリートを軸にして展開されてきた従来の共和党・民主党の政策スタンスとは違ったものなので、外交専門家は驚かされて懐疑と混乱に陥る。

 それが「トランプ現象」の正体なのだろう。

選挙勝利至上主義が
貿易戦争を引き起こす

 トランプ大統領のこうした手法が生まれた背景は、1990年代のクリントン政権にさかのぼる。

 それまで米民主党は自動車・鉄鋼など重化学工業の労働者を中心としたニューディール連合を基盤としていたが、共和党が議会多数派になった状況で、クリントン政権はゴア副大統領を軸に「情報スーパーハイウェイ構想」を立ててIT(情報通信)産業を取り入れ、さらにウォール街からゴールドマン・サックス共同会長だったルービン氏を財務長官に迎え入れて金融自由化へと舵を切った。

 相手の支持基盤に食い込む戦略である。

 そして、ITと金融をバックに各国に規制緩和と自由化を強いる「グローバリゼーション」を展開していった。

 しかし、こうした政策は国内産業を空洞化させ、白人貧困層を作り出し、貧富の格差を大きくしていった。その政策の失敗を象徴するのがリーマン・ショックで、金融業にのめり込んでいったGM(ゼネラルモーターズ)の倒産だった。

 そこで2016年の大統領選では、民主党内部で、ウォール街から多額の献金を受け取り彼らの利害代弁者と受け止められたヒラリー・クリントン候補に対し、「民主社会主義者」を自称するサンダース候補が彼女に対抗して支持を広げ、民主党の支持基盤で「分断」が露呈した。