昨年の大統領選では、相手の支持基盤に食い込む「逆転」が始まった。

 今度は共和党のトランプ陣営が従来の民主党の基盤であったニューディール連合に食い込み、この不満のエネルギーを「米国第一主義」を掲げて吸収する選挙戦を展開した。

 その結果、トランプ陣営はラストベルト(ペンシルベニア州・ミシガン州・オハイオ州・ウィスコンシン州などの重化学工業地帯)で勝利し、得票数で負けながら代理人数で上回り辛勝した。

 ロシア疑惑を抱えて、今年11月の中間選挙での勝利が至上命令になっているトランプ大統領は、今まで以上にラストベルトの選挙民の代弁者であることを印象づけねばならない。すでに上院の議席数は僅差であり、下院でも敗北する事態になると、次の大統領選も危うくなるからだ。

 そこで展開されたのは、中国など、対米貿易赤字を生み出している国への「攻撃」だ。

 今年3月に、米東部の「鉄鋼の街」ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外にある連邦下院第18選挙区の補欠選挙で共和党候補が敗北し、2002年以来の議席を失ったのが決定打となったようだ。

 新たに鉄鋼関税とアルミ関税25%を課す保護関税が打ち出された。この政策を実行したウィルバー・ロス商務長官は世界一の鉄鋼メーカーのアルセロール・ミタルの役員を務めていたが、そのミタルをはじめ米国内の鉄鋼業は、中国の鉄鋼輸出攻勢によってしばしば打撃を被っている。

 さらに続いて打ち出されたのが、知的所有権侵害を理由にした1100品目500億ドルに及ぶ中国への「制裁」関税で、とくに産業用ロボットなどハイテク製品を対象としている。

 米キニピアック大の世論調査によれば、鉄鋼・関税に対しては反対が5割に達しているが、中国産品への「制裁」関税については52%の支持(反対は36%)を得ている。

 ただ相手国も黙っているわけではない。鉄鋼・アルミ関税に対してはEU、カナダ、メキシコが報復関税計画を発表。中国もアメリカに対抗して、農産品や自動車など659品目、計500億ドル相当の米国製品に25%の輸入関税を上乗せする報復措置を発表した。

 状況はしだいに貿易戦争の様相を呈してきている。

既成政党の論理では
できなかった北朝鮮との「取引」

 トランプ氏の手法は、北朝鮮問題やイラン核合意の離脱でも貫かれている。