企業側に戸惑い
性急な“改革”が裏目に出る

  だが一方で、企業側からは、なぜ、監査法人がそれほど厳しくしようとするのか理解ができず、戸惑う声が上がっている。

「上場企業といっても、財務基盤がまだ弱い企業もある。資産や負債を健全にしていくにはある程度の時間もかかる。不正をするのはよくないが、そこは監査法人の裁量で幅を持って見てもらっていたところはあった。だが、最近の監査法人はただ金融庁の影におびえているようにしか見えない」と、ある企業経営者は言う。

上場企業と監査法人との間に生じた深い溝は、日本企業が欧米並みのコンプライアンスを備えるために避けて通れない道なのかもしれない。

 だが、金融庁が東芝事件などの「あつものに懲りてなますを吹く」ように、企業の経営実態を考慮しないまま、「理想」を性急に実現させようとしていることが、混乱を大きくしていることはないのか。

 監査法人側が過剰な組織防衛に走り、せっかく上場したのに「ダメ企業」のレッテルを貼られてしまったり、高い報酬を払わなければ「監査」を受けられなかったりする企業が増えるとなれば、やはり不健全と言わざるを得ず、互いの将来のためにもならないだろう。

(ジャーナリスト 紅林健太郎)