派手な負け方を経験した“一発屋芸人”たちの
生き方はヒントになる!

負けのマネタイズかい(笑)。ただ、たしかに負けのほうがいいデータは詰まっている感じはしますね。勝つと嬉しいし、お金も入って来るかもしれないけど、勝ちは言ってみれば、的にピンポイントで当てること。でも負けると、当たらなかった的のまわりというか、上手くいかなかった範囲がわかる。そこの情報量のほうが大事なんじゃないですかね。ま、といはいえ、この本にはなんの成功の法則もなくて、10の負けが書いてあるだけですけど(笑)

 いや、それでいいのだ、きっと。考えてみれば人生は負けることのほうが多い。ならば派手な負け方を経験した“一発屋芸人”たちの生き方から、ぼくたちは多くのことを学べるのではないだろうか。仕事だったり、子育てだったり、介護だったり。いろんなものを背負いながら、懸命に頑張っている人にこそ、本書の言葉は届くはずだ。

 トークショーの前に、会場となった有隣堂「STORY STORY」の店内を見て回った。雑貨と本が一体になった心地いい空間である。文庫の棚をみると、『うらおもて人生録』が一冊だけあるではないか。

 ふと、おせっかいな気持ちが湧いてきた。

 (トークショーが終わったら、山田ルイ53世にプレゼントしよう)

トークショーの模様 ©新潮社

 彼ならこの本を気に入ってくれるのではないか。そう思ったのだ。

 会場からは威勢の良い「ルネッサーンス!」と「フォー!」が聞えてくる。

「ニコール・キッドマン、イコール、コッペパン」

 ジョイマンの脱力系ラップに思わずぷっと吹き出してしまう。

(いいなぁ、みんな。人生いろいろ大変だけど、お互い頑張ろうよ)

 我に返ると、店員さんに「カバーの色はどれになさいますか?」と訊かれていた。見ると10種類のカラフルな色が並んでいる。

「これでお願いします!」

 ぼくは迷わず、梅雨の晴れ間のような鮮やかなライトブルーを指差した。

(HONZ  首藤淳哉)