景気そのものを見るのであれば
日銀短観は「多くの中の一つ」

 筆者は、株価などを語るために経済の話をする「マーケットエコノミスト」ではなく、景気そのものの話をする「エコノミスト」だから、日銀短観は「数ある景気判断材料の一つに過ぎない」と考えている。そういう意味では、業況判断DIが特に重要だとも思っていないし、業況判断DIの中でも大企業製造業より全規模全産業が重要だと考えている。

 このあたりは、読者が何の目的で日銀短観を見るのかによって適宜使い分けていただきたい。そもそもエコノミストの話を聞くのか、マーケットエコノミストの話を聞くのかを含めてのことである。

 ちなみに、大企業製造業の業況判断DIを見る際には、それが景気とストレートには連動していないことに留意したい。

 ドル高円安になると、輸出企業がドルを高く売れる一方で、輸入企業はドルを高く買わされるので、景気への影響という面では相殺されるはず。しかし、大企業製造業の利益という点では、輸出企業の利益増が大きく反映される一方で、輸入品の値上がりは中小企業にも消費者にも転嫁されるので、大企業製造業の業況判断DIにはあまり反映されない。つまり、ドル高円安が景気に与える影響と、業況判断DIに与える影響は異なるのである。

 余談だが、企業の利益と景気の関係も一般に思われているほど関係が深くない。企業が儲かっても設備投資をしないならば、利益は銀行借入の返済などに用いられるだけで、景気拡大に寄与しないからだ。

「企業が儲かっているのは景気がいいからだ」とは言えそうだが、これも必ずそうだとは言えない。海外の景気がよくて海外子会社が儲かり、親会社に配当している場合もあるし、企業が従業員の給料を抑え込んで儲けている場合もあるからだ。

 その意味では、国内の「製商品・サービス需給判断」だとか、「設備投資計画」だとか、業況判断DI以外の項目も幅広く見た上で、景気を判断する必要があるだろう。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)