『THE BARN』
「風の手のひらの上」を収録した、1997年にリリースされたアルバム。2017年にはリリース20周年記念として当時のライヴ・フィルムのプレミアム上映イヴェントが開催された

自分に対する掟がゆるくなってきた

── ここしばらくは、驚くほどのハイペースで新作をリリースされています。
 そうですね、そしてそのアルバム一枚一枚が、ソングライターとしても、バンドとしても、自分たち自身にとっても非常に納得ができるものになっている。そしてそれをファンのみんなに喜んで聴いてもらえている。これは本当に、非常に嬉しい状況ですよね。

 レコードデビューは1980年で、'80年代、'90年代と、たくさんの曲をリリースしてきているわけですが、最近のコンサートの本編では、ザ・コヨーテバンドを結成してからの曲だけで構成しています。アンコールはいろいろやるんだけど、基本的には'90年代の曲でまとめている。

 ファンの人たちがこういう活動を受け入れてくれているのはラッキーですよね。'80年代の、いい意味でのノスタルジーを求めているファンがいることもよくわかるんだけど、ぼくはやっぱり現代と未来を求めている存在ですから。もちろん、時折、当時に戻ってみようという企画でやるときは思いっきりやるけれどもね。

── でも、佐野さんはノスタルジックなイメージとは程遠い気がします。実際、〝新〟佐野元春と言われているわけですし。
 (笑)そうあることができるのは、とても幸せなことだよね。

── 佐野元春は今がピークだ、というご認識でしょうか?
 クリエイティブな意味では、いつでも今がピークでありたいと思います。でも、実は、話はそう上手くはいかない。ダメなことも当然あります(笑)。でも、今はそれを受け入れられるようになったことが大きいですね。

── 以前はそれを受け入れられなかった?
 若いときには自分が弱る時を受け入れることができなくて、必死にあがいていたこともあります。いつでも自分はピークであるべきだと強く思い込んでいたから。苦しかったですね。

 でも、今は違います。創作に対して自由、自分に対しても自由。自分に対する掟の縛りが、若い頃ほどキツいものではなくなってきた。そのおかげで、ぼく自身のクリエイションが自由になってきたという見方もできると思う。人生というのは不思議なものです。

〝新〟佐野元春、『Six』読者へのメッセージ

── この『Six』の読者は、40代以上のビジネスマン、経営者層が多いのですけれど、ビジネスマンの〝自由〟についてはどのように思われますか?
 ぼくの目に映る優れたビジネスマンは、やはり、自分の中にしっかりした自由という概念を強く持ちつつ、その自由を多くの人たちと共有しようとする人のような気がしますね。そういう優れたビジネスマンがたくさんいるし、そういう人たちこそ成功していくんじゃないかとぼくは見ています。

── そもそも、ビジネスにおいても、不自由な成功というものがありえるのだろうか、という気もします
 成功がどういうものを指すかによって変わるでしょうね。成功の意味も人によって違うでしょうし。でも、自分が自己実現を果たすことを成功と見なしている人にとっては、自らが自由であるということはとても大切だろうと思います。

── 生まれ変わったように若返り、世の中にも流されず、過去にもとらわれず、どこまでも自由である……佐野さんはほとんど理想と言える状態にあるように思えるのですけれど。
 (笑)ぼくはロッカーですからね、気兼ねすることも忖度することもない。本当に好き勝手ばかりやっていて、ぼく自身を自由な状態にして、創作にそれを活かし……もちろん、その好き勝手は人を傷つけたりするようなことではなく──いつまでもそれを貫いていくことができればな、と思っています。

── そのコツは?
 ロックンロールだね。

── 最後に、『Six』読者の方々にメッセージをいただけますか。
 お互いに人生を楽しもう。ロックしようぜ。

佐野元春 
1956年、東京生まれ。80年シングル「アンジェリーナ」でデビュー。82年に3枚目のオリジナルアルバム「SOMEDAY」が大ヒット。デビュー以来、自身の音楽活動以外にも、他アーティストへの楽曲提供、雑誌出版、イベント制作などを精力的に展開。現在は17枚目のオリジナルアルバム『MANIJU』を引っさげ全国ツアーを展開中