Take Turns(テイク・ターンズ)ー子どもと交互に対話するー

 脳の発達を考えたときには、「3つのT」のなかでもっとも大事である。そして、焦らずに子どもの反応を待つことがポイントである。話し始める前の子に対しては、ジェスチャーを解釈しながら、コミュニケーションを取る。話し始めたばかり子どもには、単語が出てくるのを待つこと、親は言葉を先取りすることを我慢することである。親が子どもに問いかける質問の引き出しが重要になる。

 この3つを様々なシーンで応用する方法も充実している。文字や意味を理解していない幼児に、本を読むことは意味があるのか、意味があるなら、どんな読み方がおすすめなのか、は目からウロコの連続で、読み応えがある。他にも、数や形についてはどうなのか気になる情報が目白押しだ。3つのTを通じてできることとそのエビデンスを逐一で提示している。

 また、親子の会話を万歩計のように測る、テクノロジーの利用についても紹介されている。「測れないものは、変えられない」し、保護者の動機づけとしても、可視化されることは3つのTを続ける励ましになり、育児をそれなりにやれているな、というささいな自信にもなる。

 そして、本書には教育の研究者やジャーナリストが冷静に書いたポップサイエンス、現場で活躍する教育者が熱量を込めて書く啓蒙書のどちらとも一味違う魅力がある。科学への深い理解と丁寧な説明、そして、育児現場に対する冷静な目、さらに豊富な臨床経験と3000万語イニシアチブの地道な積み重ね、これらの経験を一言一言に丁寧に織り込んでいる。医者としての冷静沈着さと一人一人の子どもと親への愛が絶妙に共存している。

 もうひと押しするならば、一人の女医が自分のミッションを発見し、0-3歳の子どもたちの環境を変えようと、人生の旅を駆け抜けていくストーリーとしても優れた作品である。そして、家族のストーリーが書かれたエピローグ、涙なしには読むことはできない。感動を味わうために、最後まで読み切ってほしい一冊だ。

(HONZ  山本尚毅)