金融危機の震源地・米国のマクロ経済情勢は日々厳しさを増し、トヨタ自動車の業績は加速度的に悪化している。しかし、米国トヨタ販売のドン・エズモンド上級副社長は、今年下半期にも事態打開の曙光が見えるだろうと楽観する。
トヨタ米国販売 ドン・エズモンド上級副社長 |
―トヨタは主力市場の米国では過去の不況期には、業界平均を上回る粘り強い成長を見せていた。それが今回ばかりは様子が異なる。何が起きたのか。
メディアはよく“トヨタですら”という表現を使うが、正しくは“トヨタでも”これほどまでの実体経済悪化のTSUNAMI(津波)には抗えないということだ。私も40年以上この業界いるが、率直に言って、かくも急激な消費者心理の冷え込みは初めて経験する。2008年の米国の新車市場は1320万台と、過去20年で最悪の台数にまで落ち込んだ。米国トヨタにとっても、1991年以来初めて販売台数の増加(前年比)を果たせなかった不名誉な年となった。
ただ、それでも米国トヨタは昨年、市場シェアをなんとか0.5ポイント伸ばし、16.4%とし、10年連続のシェア増加を達成した。「カムリ」は、量販車ナンバーワンの地位を維持できたし、そのカムリを含む「トヨタ」ブランドは、(GMの「シボレー」を抜き)米国最大の量販ブランドのポジションに躍り出た。一方、「レクサス」ブランドも高級車市場で最大の販売台数を誇る。自動車業界におけるトヨタの競争力は、依然健全だ。
―2009年の見通しは?
今年は上半期と下半期で様子が大きく変わると見ている。上半期は、住宅市場とクレジット市場が引き続き厳しい展開になると予想されるため、消費者心理を改善させることに全力を尽くしたい。消費者がショールームに戻ってこないのは、景気の悪化を実感していることもさることながら、クレジット(ローン)がつかないと誤解しているからだ。
むろん与信のバーをいたずらに下げるようなことはしないが、傘下の金融子会社がローンをふんだんに提供する用意があることだけは、消費者に周知徹底していきたい。オバマ政権の景気刺激策が奏功して、消費者のコンフィデンスさえ回復すれば、下半期は年末に向けて事態打開の曙光が見えてくると思う。2009年の米国新車市場は、1250万台近辺の攻防になるのではないか。