高級車ブランド「メルセデスベンツ」を擁する独ダイムラーも、世界同時不況の影響で、苦戦を強いられている。だが、同社のツェッチェCEOいわく、「眼下の危機は環境対応車へのパラダイムシフトを加速させる好機となり得る」。(聞き手・原文/ジャーナリスト ポール・アイゼンスタイン Paul Eisenstein)
独ダイムラー ディーター・ツェッチェCEO |
―2008年をどう振り返るか。
昨年は、文字通り激動の年だった。上半期の販売は年初に立てた目標に近い水準で推移していたが、下半期に入った途端に、世界はがらりと変わった。月を追うごとに、われわれの予想を上回るペースで、しかも世界規模で、事態は悪化していった。ただ、2007年はダイムラーにとって記録的に良い年だったことを考えると、2008年は前年比で落ち込んだとはいえ、業界内での相対比較では健闘したと考えている。
―2009年の見通しは?
問題はいつ(新車販売が)持ち直すかだが、率直に言って、現在のように不透明なマクロ経済情勢が続いている状況だと、的確な予測は難い。しかし、“予測ゲーム”をいつまで続けていても仕方ないので、今はとにかく自分たちの強みであるプロダクトにフォーカスする。
幸い今年は新型メルセデスベンツ「Eクラス」という目玉商品の投入を予定している。また、自動車業界は現在、二酸化炭素(CO2)排出量が少ない環境対応車へのパラダイムシフトの初期段階にあり、私自身は、現在の危機はむしろそうしたシフトを加速させる好機であると捉えている。
―1月の北米モーターショー(開催地・デトロイト)の主役は環境技術だった。ダイムラーも新たにバッテリーや燃料電池を搭載する環境対応のコンセプトカー「ブルーゼロ」を披露した。ただ、イメージ戦略は別として、そうしたクルマが収益に貢献し始めるのはいつ頃になりそうか。またそもそも本当に収益に貢献するようになるのか。
こう答えよう。(ガソリンなどの燃料を燃やして動力を取り出す)内燃機関は今後も当分消えることはない。しかしその一方で、われわれは毎年、次世代の環境対応車の開発のために莫大なお金を投じている。近い将来に、そうした最先端の環境対応車をショールームで見られるように必ずなる。
むろん、消費者の食いつきという意味では、浮き沈みがあるだろう。それは、環境意識の高まりのペース云々というよりも、燃料価格の動向に左右されることになると思う。いずれにせよ、このパラダイムシフトは本物だ。逆行することはもはやない。