政府の働き方改革法案が国会で成立した。しかし、残業時間の上限規制や高度プロフェッショナル制度の導入に比べて、より本質的な改革である「同一労働同一賃金」については、ほとんど議論がされなかったのも事実だ。これは政府提案の内容自体が、当初の趣旨と比べて骨抜きされており、現行の働き方に大きな影響を及ぼさないものとなっていたためである。
政府の働き方改革実行計画によれば、同一労働同一賃金の導入は、同一企業における正社員と非正規社員との間の「不合理な待遇差」の解消を目指すものとされている。基本給や各種手当といった賃金の決定ルールの差については、単に、「正規と非正規との間で将来の役割期待が異なるため」との主観的・抽象的説明では不十分であり、職務内容や配置の変更範囲等、客観的・具体的な実態に照らして判断という基本方針は妥当である。
しかし、この原則が、今回成立した働き方改革法案では、具体的に、どこまで適用されているのだろうか。まずは、これを正規・非正規の賃金格差について最高裁判決が下された事案と対比して見よう。
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働き方改革法案と同一労働同一賃金
第1に、各種手当について、である。例えば、住宅手当を転勤を前提とした正規社員に限定するというような明確な根拠がなければ、非正規にも平等にという原則は、「ハマキョウレックス」(浜松市の物流会社)に対し、有期雇用契約で勤務する契約社員が、同じ業務の正規社員の基本給や諸手当との差額の支給を求めた最高裁の判決と整合的である。
第2に、賞与については「会社の業績等への同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める」とした。これを字句通りに解釈すれば、例えば同一の路線を走る非正規のトラック運転手について、会社への貢献度に正規社員との差はないため、少なくとも基本給の同一月数分の賞与を得る権利がある。これは定年退職後再雇用の社員への賞与を否定した、長澤運輸事件の最高裁判決の見直しを意味するのだろうか。それとも定年退職者は例外というような抜け穴を作るのだろうか。これは、今後、増える一方の高齢者の活用に重要なポイントとなる。