一方、日本人の中華料理店に対する情報はやはり日本のマスコミの影響をかなり受けている。友人からの直接の紹介や、フェイスブックなどで偶然知ることもあるが、雑誌やテレビ、ネットの飲食店予約サイトなどから流れてくる情報が圧倒的に多く、また、それに大きく左右されている。

 そこで「あの店がおいしい」「あの店の中華こそ本場の味だ」などと日本人同士だけで判断し、評判のいい店に出かけて行く。その一つが、冒頭に書いた池袋のディープな中華料理店であり、その情報がまわりまわって、「日本で有名な中華料理店」として定着していく。

 だが、それはあくまでも「日本人から見ておいしい店」に過ぎない。前述した通り、中国人が注文する料理と、日本人が注文する料理もかなり異なっている。

 私たちが惑わされがちなのは、その有名店にも、実際に数多くの中国人客が足を運んでいる、という点だ。だからこそ妙に安心して「だって、あそこは中国人が行く店(本場の味がする店)だから、やっぱりおいしいんだよ」と思い込んでいたのだが、在日中国人のコミュニティーは何百、何千個と存在し、それぞれが別々の世界に生きている。私の友人の妻や知り合いの女性経営者は、ディープな中華料理店に行く層とは、おそらく全く別のコミュニティーに属しているのだ。

 要するに、繰り返しとなるが、中国人と日本人では、コミュニティーが全然違う、情報の伝達経路も全く違う。そして、日本に住んでいる中国人といっても、千差万別である、という当たり前の話なのだ。

 この日本という小さな国に住んでいながら、私たちはこんなにも「違う世界に生きている」ということを、私はこの小さなエピソードから認識したのだった。