この美味しそうな写真は、どうやって撮ったんですか!?
小関 では、具体的に『焼肉の達人』で撮影した部位について、コツを教えて頂けますでしょうか。1つ目は、BBQ610さんの塊肉グリルです。肉に生卵の黄身をかけ、卵がテリーーンと下にタレかかっているところをうまく撮影されています。この卵の落ちかけを撮影するコツを教えてください。
榊 アングルを探す時に、下から見るとゴツゴツとした岩山のように見えました。イメージとしては、アルプスから流れる雪解け水です(笑)
一発撮りだったので(今回の本はお店ではほとんど一発撮りです)、ある程度黄身の動きを先読みして、山の中腹辺りで連写して撮りました。撮り逃しが無いようにするには、予測と連写が大事です。しかしお店では他のお客様もいるので、シャッター音には気をつけてくださいね。
小関 2つ目は、焼肉乙ちゃんさんの黒毛和牛雌一頭盛り15種です。盛り合わせってどこにフォーカスして撮影するかって非常に難しいと思うんです。しかも15種ありますから、なおさらですよね。盛り合わせを上手く取るコツを教えてください。
榊 とても立派な盛りでした。皆様の想像以上に大きいんです(笑)。一眼レフで撮ると、被写体全てにピントが合わせるのはとても大変です。逆にスマホでは、元々レンズが広角になってるので、ピントが全面に合いやすいですね。盛りの真ん中に、お店のオススメ部位がある事が多いので、そちらを中心に、真上からではなくちょっと斜め上から撮ると良いと思います。
小関 3つ目も、焼肉乙ちゃんさんになりますが、国産生タン厚切りです。我々の間で通称ガメラタンと言っていますが、分厚いタンを美しく鹿の子切りにしており、それを非常に立体的に撮影されています。立体的に奥行きを出す撮影のコツを教えてください。
榊 ガメラタンを見た時の圧倒的な存在感にビックリしました。凄く綺麗な鹿の子切りだったので、サイド光で切り口を際立たせました。キリッと立ってる断面は甲羅のように見えますね(笑)。奥行きのコツは、全面にピントを当てずに後ろをボカすことで、それによって遠近感が出ます。ただピント(絞り値)が甘過ぎると、フワフワした感じになるので注意です。お肉の写真は男性的なカチッとした写真の方が喜ばれるので。
編集部 すぐ食べたくなっちゃう美味しそうな肉ですが、榊さんのコツを意識してこれからは撮影したいと思います。ありがとうございました。
1970年、大阪府生まれ。サラリーマン作家
趣味、焼肉。都内140店舗の焼肉店を訪問するなど独自研究、分析がこうじて、東洋経済オンラインで焼肉記事を連載。たちまち人気連載となった。
焼肉は、メインの肉を焼き仕上げることを客に委ねられるケースが多い、減点法のグルメ。きっちり焼き上げないとせっかくの美味しい肉がもったいないことになってしまうのだが、今まで上手く焼くための指南書が存在しなかった。美味しい焼き方の技術を読者にシェアしたいというのが、本書を書く動機となった。
筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程後期中退。早稲田大学大学院(ビジネススクール)国際経営学専攻修了[経営学修士]。現在、都内企業に勤務しながら作家として活動。著書に、『「即判断」する人はなぜ成功するのか?』(サンマーク出版)、『世界一わかりやすいゲーム理論の教科書』(KADOKAWA)などがある。
榊智朗(さかき・ともあき)
フリーカメラマン、写真家。
1979年、福岡県朝倉市出身。2006年リクルートひとつぼ展入選後、独立。人物・料理・建築等の広告、書籍の表紙等、PV等様々な分野で活躍している。