『湯を沸かすほどの熱い愛 』
『湯を沸かすほどの熱い愛 』
DVD&Blu-ray発売中(¥3,800+税)発売元:クロックワークス 販売元:TCエンタテインメント

 しかし、パン屋でレジを打っている際、双葉は急に倒れます。そして病院での精密検査を経て、双葉はステージ4の末期がん、余命2~3ヵ月であることを知らされ、残された人生を生き切ることを決断します。

 まず、探偵の滝本(駿河太郎)から入手した情報を基に、隣町で別の女と同棲していた一浩を連れ戻します。一浩は、自らの不行状が双葉にストレスを与え、病気の原因になったのではないかという自責の念に駆られており、別の大きな病院で検査を受けることを提案します。これに対する双葉の返答です。

「私ね、少しの延命のために自分の生きる意味を見失うのは絶対いや。私には、どうしてもやらなきゃいけないことが、まだある」

 その言葉通り、双葉は休業した銭湯を再開したほか、一浩の愛人から押しつけられた片瀬鮎子(伊東蒼)を引き取ります。さらに、学校でイジメられていることで「最下層の人間」と自信を失っている安澄に逃げないように諭したり、旅先で知り合ったヒッチハイカーの向井拓海(松坂桃李)を励ましたりして、死の恐怖と戦いつつ、一つひとつ懸案を処理することで、残された人生を生き切る設定になっています。

がんを告知していなかった
黒澤映画の『生きる』

 同じくがんを取り扱った古い日本映画としては、1952年に公開された黒澤明監督の『生きる』も挙げることができます。ここでは、地方公務員として怠惰に生きてきた渡邊勘治(志村喬)が胃がんであることを自覚し、残された人生で何をすべきか考え、行動していく様子が描かれています。いずれも詳細はDVDでご覧いただくとして、がんをテーマにしつつ、死期を悟った人間の生き方を描いている点は一致しています。

 違いを挙げるとすれば、医療技術の発展があるでしょう。がんは今や、すぐに死を意味するわけではなくなっており、今の技術であれば『生きる』のケースは胃の外科手術で対応できるかもしれません。

 もう一つが告知の有無です。『湯を沸かすほどの熱い愛』では、双葉が病院で精密検査を受けた後、医師との間で以下の会話を展開します。