昔の特技を
「働き」のタネにする
高校時代の同級生で、少年時代から書道に打ち込んでいた人がいます。習い事の域を超えていたのではないかと推察しますが、とはいえ、その後長い間、彼の中で「書」は封印されていました。
彼は社会人になり、ある外資系企業の取締役にまで上り詰めました。いつの頃からか、封印していた書道をまたやり始めたのです。
素養があったからでしょう。瞬く間に上達しました。彼は別段、会社を辞める気はなく、書道を仕事にする気もありませんでした。
ただ彼の中で、書道は趣味の域を超えて、生きる上で大きな存在になっていきました。今や心の中に占める書道への想いは、全体の半分とは言わないまでも3割や4割を占めているのではないでしょうか。少なくとも私からはそう見えます。
師について習いながら、自分も何人かの人に教えています。展覧会にも出品し、相応の評価を得ています。人にあげる贈答品もすべて「書」です。色紙や、時には掛け軸など。これが見事で、皆から喜ばれています。
お金儲けのための仕事ではありませんが、他人に感謝され、自分の人生を豊かにする原動力になっている。まさに「働き」であるわけです。
彼のことはよく知っているつもりでしたが、書道については知りませんでした。私の記憶では、彼はバレーボールに熱中していました。ただ、細密画を描くのが趣味で、それが上手かった。宇宙戦艦ヤマトの内部構造など、見事でした。細密画と習字が相通じるものなのか私にはわかりませんが、いずれにせよ、彼には秘められた技があったわけです。