習近平が総書記就任後指導思想として掲げた『中国夢』の作者、劉明福中国人民解放軍上級大佐・国防大学教授は、筆者との共著『日本夢 ジャパンドリーム:アメリカと中国の狭間でとるべき日本の戦略』(晶文社)のなかで、軍隊の腐敗とそれに対する習近平の対策について次のように述べている。

「改革開放から30年以上の月日が経ちましたが、軍事エリートの危機は驚くほどに深刻であると私は断言します。病状は主に三つあります。一つは“平和病”、彼らは闘うための思想に欠けています。二つに“腐敗病”、二人の中央軍事委員会副主席が腐敗を誘発・リードし、カネの力で将軍を生ませてきました。軍隊における“人身売買”という現象は極めて深刻です。三つに“凡庸病”、部下を引き連れ闘う能力に欠けているにもかかわらず、コネを作り、賄賂や腐敗で自らを昇進させる能力だけには長けている。一連の腐敗分子・投機分子らが軍隊のなかで好き勝手やっている。こんな状況が許されるわけがないでしょう。このような危機的状況を前に、習近平主席は全党・全軍反腐敗を徹底し、戦い方を知っていて、戦う意志のある優秀な軍事人材を重用するシステムを構築しようとしています。軍隊は人民に信頼される組織でなければならない。我が人民解放軍は“構造病”をガバナンスし始め、軍事大革命を推進しようとしているのが現状です」(第3章「チャイナドリームとアメリカンドリーム」、122〜123頁)

 二つに共産党の解放軍に対する絶対的支配の強化である。

 今年4月12日、南シナ海で海軍の閲兵式に出席し、「人民海軍を全面的に世界一流の海軍に育て上げる」と高らかに宣言した習近平・中央軍事委員会主席だが、同時に、目の前で自らの談話を聞いている海軍関係者らに対して「党の軍隊に対する絶対的領導を全面的に貫徹するという根本的原則と制度」を徹底的に順守することを要求している。今後、解放軍はこれまでの5年間以上に“党の軍”としての地位を受け入れ、そこに甘んじていくことになる。解放軍が自らの意思や戦略を持つことは許されない。すべては「党の言うことを聞け」(習近平)ということである。

 以上、習近平政権下における共産党と解放軍の関係性を簡単に振り返ってみたが、これらの特徴や傾向は一体何を意味するのだろうか。

 前述したように、共産党にとって解放軍をいかに掌握し、支配下に入れるかという問題は政権の安定性に直接関わる要素である。国際社会を見渡してみれば、軍は国に属しているのが普遍的で、特定の政党の支配下にあるという状況はまれであり問題だとも言えるが、それでも中国にとって、共産党が解放軍を相当程度に掌握していること、若干センセーショナルに換言すれば、軍部が“暴走”しないという状況は中国の政治・経済社会の基本的安定に資すると言える(もちろん、そのためには軍部を支配する立場にある政党が暴走しないことが前提条件となる)。