特に、中国との関係は重要だ。中国は、北朝鮮を国際社会の意に沿わせるには、自らを介さなければならないという状況を維持したい。それができないと、金委員長が米国とダイレクトに交渉し、中国の朝鮮半島への影響力が低下する恐れがある。覇権強化を目指す中国は、その展開は避けなければならない。そこに目をつけて、北朝鮮は中国に恭順の意を示した。金委員長は、中国という“虎の威”を借り、米国という世界最大の強国と対等な立場で交渉する状況を整備した。

 また、北朝鮮は極東地域での影響力拡大を狙うロシアにも接近している。そこには、ロシアを介在させることで米中を牽制し、自国に有利な状況を作りたいという金委員長の考えがあるのだろう。

 北朝鮮は、米国が中間選挙を控えていることにも目をつけた。トランプ大統領には、外交面で目立った成果がない。同氏にとって、“史上初の米朝首脳会談の実現”という実績を作ることは、有権者からの支持増加(点数稼ぎ)に不可欠な要素といえる。それに目をつけて、北朝鮮は米国との対話を望んだ。

 6月12日の米朝首脳会談は、基本的にはトランプ大統領の“判定負け”だ。その心は、北朝鮮はほとんど具体的な譲歩を示さずして、体制維持への保証を得たからだ。それが北朝鮮にとって大きなベネフィットであることは言うまでもない。首脳会談前日、金委員長が予定外にシンガポール観光に繰り出したことを見ても、同委員長はご機嫌で、かなり余裕があった。それだけ、北朝鮮は中間選挙に向けて点数を稼ぎたいトランプ政権の焦りに乗じることができたということだろう。

 最後に、北朝鮮は韓国文政権の融和政策の勢いにもうまく乗った。文大統領は有権者の支持を得るために北朝鮮との関係をよくしたい。その勢いを利用するために北朝鮮は“ほほえみ外交”を仕掛けたのである。