韓国・文政権の
軍事演習中止の背景

 北朝鮮にとっての米朝首脳会談の成果は、すでに顕在化している。それが、米韓合同軍事演習と韓国単独での軍事演習の中止だ。

 米朝首脳会談の場で、トランプ大統領は突然、対話が続く間は合同演習を中止すると表明した。同氏は、北朝鮮を強硬路線から対話路線に転換させたことを世論に示したかった。それが、北朝鮮への譲歩につながった。この点でも、北朝鮮はトランプ大統領の点数稼ぎの考えにうまく乗ったといえる。

 合同演習の中止は、マティス国防長官の頭越しになされた。同盟国の安全保障に影響を与える決定が、国防長官抜きで決められたのは前代未聞だ。これは北朝鮮にとって都合がよい。米国の意思決定は、トランプ大統領の発想次第の状況ということだ。北朝鮮にとって、米国の主要閣僚を相手に交渉する意義は小さい。

 7月上旬の訪朝の際、ポンペオ国務長官が北朝鮮から相手にされなかったのはそのためだろう。北朝鮮が求めているのは、トランプ大統領という米国の最高意思決定権者から、直接、制裁緩和などへの確約を取り付けることだ。その上で、表向きは核放棄に応じる。金委員長はそれを狙っている。トランプ大統領が主要閣僚の頭越しに政策を進めることは、北朝鮮を勢いづかせるだろう。

 合同軍事演習に加え、韓国は単独の戦時演習も中止した。この点でも北朝鮮は、文大統領の点数稼ぎの発想にうまく乗ったといえる。本来、韓国は米国との安全保障を強化し、制裁の強化などを国際社会に求めるべきだ。それが、北朝鮮の身勝手さを食い止めるためには欠かせない。

 しかし、文大統領は自らの支持を確保するために北朝鮮との関係強化を重視している。その理由は、朴前政権が北朝鮮への圧力を重視したからだ。前政権への不満を取り込んで政権を維持するために、文大統領は大衆に耳当たりの良い主張=北朝鮮との融和を主張している。それを北朝鮮はうまく利用している。金委員長は、自らの独裁体制の維持に向け、大きな成果を得たといえる。