エンジニアにキャリアのロールモデルは提示できないか?
竹内 教えてもらわないという点では、もう1つあります。技術力で勝負していく人は、最初は出世が早いんですよ。でも、あるところでパタッと昇進のスピードが鈍ります。そこからはむしろ、マネジメントができる人のほうが上がっていく。でも、誰も教えてあげないんですよ、何が足りないかを。文系でも理系でも、そういうことがわかっている人だけがどんどん上がっていきますよ。
もし、不器用だから技術だけで生きたいと思うなら、技術一本に賭けるという強い気持ちが必要です。サンディスクのオタクエンジニアのように、思い切りをもてばいいんです。でも、そういう技術だけに秀でた人は、日本の会社では報われませんよね。
ちきりん 私はエンジニアの人に、キャリアのロールモデルを5つぐらい提示して選んでもらったらいいんじゃないかと思ってるんです。
たとえば、第1の道として、「この分野に関してはコイツの右に出る奴はいない」みたいなオタクエンジニアになる道。狭く深い知識で生きていくことになるから社内での出世は難しいけれど、ノーベル賞を取るぐらいの勢いで頑張る人なら挑戦していい道だよ、と。
2つめに、そこまで高い技術力はもっていないけれど、トレンドに合わせて売れる商品を器用に開発していくという売れっ子エンジニアの道。
3つめは、エンジニアとしては「まぁ、ちょっとね」という人でも、マーケティングや営業をやらせると、技術のバックボーンを活かして他の営業マンとはひと味違う営業をやります、という道。
4つめに、もっと大きくマネジメントとか人を動かすことにセンスを発揮する人、ビジネススクールに進みたいという人。最終的には経営者を目指すという道ですね。
さらに5つめとして、エンジニアとしてベンチャー企業を興してみるという道です。工学部の学生に、最初から「君達エンジニアには、最終的にこういった5つの仕事があるから」といった説明をするんです。
エンジニアとして生きて行くにはどんな道筋があるか、それがおぼろげにも見えていれば、たとえ入社時点ではどれが自分に向いているかわからなかったとしても、30歳にもなれば見えてくるでしょう。「俺は5つのうち、どれに向いているエンジニアかな?」と考えながら必要な勉強を積んでいくことは、エンジニアのためにも、会社のためにもなりませんか?
竹内 その通りですね。そうあって欲しいと思うけど、残念ながら会社は、そういう風にキャリアパスを整備できていませんね。
(続く)
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