リストラが遅れるとエンジニアが不幸になるわけ
ちきりん エンジニアのキャリアの話に戻しますと、人っておもしろくない仕事を続けているとダメになるのも問題なんですけど、それより大きな問題だと思うのは、その間にみんな確実に歳をとるということです。30代の人は40代に、40代の人は50代になってしまう。当然、技術にも追いつけなくなりますよね。バイタリティも、クリエイティビティも少しずつ失ってしまう。
もし、20代で会社が潰れるなり自分で辞めていれば、若いから新しい道でも活躍できます。もともと優秀なエンジニアなんですから。でも、40歳になるとどうでしょうか。ローンとか家族とか、抱えるものが重くなると、将来性は高くても給与の低いベンチャーには転職しにくくなるし、リスクも取れなくなる。さらに、新しい技術を40歳から手がけるのはたいへんです。
竹内 40歳になった頃、環境をガラリと変えるよと言うと、いや困るよ、俺の時だけはやめてくれよ、20年後にして…と強力なバイアスがかかるわけですね。
ちきりん だから赤字でもとにかくそのまま……となるわけですよね。本当にもったいない。立ちゆかない部門をバーンと潰してしまえば、そこにいる人は優秀な人ばかりなので、グリーにしろ、楽天にしろ、Googleにしろ、採用したい会社はいくらでもあるはずなのに。変化のなにがそんなに怖いのか全然わかりません。
竹内 本当に劇的に変えていこうとする人は、日本の会社から排除されますよ。そこそこ優秀な人はOKなんですよ。10年もすると、古いことを言うようになるから。
ちきりん 本当にトンガっている人は怖がられるんですね。
竹内 私も最近、少し知られるようになってきたんですが、そうすると、かぎつける能力というか、嗅覚という意味では、出版、マスコミ、金融、この3つがすごいですね。なんとか竹内という奴を利用して儲けてやろうと近寄ってくる。大学の教員なんて、タダで使えるコンサルみたいなもんですから、どんどん利用すればいいんですが、古巣のエレクトロニクス産業からはあまりお呼びがかからない。
ちきりん メーカーって、外部の人を利用しようという気がまったくありませんね。内部完結型だからですかね。
竹内 メーカーといっても、海外からはたくさんオファーがありますよ。日本のメーカーだけ、なぜか来ない。
ちきりん 日本企業って、一度その組織を出た人に対しては、なかなか受けつけないですね。あと、よそ者はダメ、社内で育った人はOKと、中と外の人にすごい壁をつくるのも特徴的だと思います。世界は「コラボレーションだ、ネットワークだ」と言い始めているのに、ものすごい時代遅れです。