胚培養士をめぐる実態とは
顕微授精をする胚培養士。手技だけでなく、質の良い精子や卵子を見分ける目も技量の一つという Photo by Seiko Nomura

ある不妊治療クリニックの一室で、顕微鏡を覗く白衣の女性。モニターには、注射針で精子を卵子に注入する様子が映し出された。彼女の職業は「胚培養士(はいばいようし)」。不妊治療のニーズ拡大に伴い、生まれた新たな医療職だ。そんな胚培養士が、今「稼げる職業」として注目を集めている。『週刊ダイヤモンド』7月21日号の第2特集は、「不妊治療最前線」。その拡大版として、胚培養士をめぐる実態をお届けする。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 野村聖子)

 不妊治療は、もはや医療ではなくビジネス――。それは多くの医療関係者が認めるところだ。

 日本産科婦人科学会の統計によれば、2015年に行われた生殖補助医療(体外受精や顕微授精などの高度な不妊治療)の件数は、42万4151件。医療機関によって差はあるものの、1件あたりの治療費はおおよそ40万~50万円前後なので、件数と治療費を単純に計算すると、約1700億円から2000億円という市場規模になる。

 この一大市場の重要な担い手が「胚培養士(はいばいようし)」という職業だ。

 もともとは医師自身が生殖補助医療を行っていたが、不妊治療の需要が増えていく中で30年ほど前から細胞生理学に精通した臨床検査技師に生殖補助医療を任せたのが始まりだという。